500円玉貯金箱のように、現金が何十万円も貯まるまで、家の中に置いておいてはいけない。また銀行の普通預金に置いておくのももったいない──と私が言うと、「では、いくらまでなら置いておいていいのか?」と、お客様から聞かれる。
家に置いておく現金がいくらまでで、普通預金に預ける預金額がいくらまでかは、その人の暮らしぶりと運用の必要性、リスクをどのくらい受け入れられるかという程度によって違ってくる。一概には言えないが、私の場合は普通預金が50万円を超えたら、すぐに証券会社のMRF=マネー・リザーブ・ファンド(Money Reserve Fund)に移動する。
移動する理由は3つある。第1に普通預金よりMRFの利回りが良いからだ。今は超低金利になってその差もわずかだが、MRFにはリスクがほとんどないので、普通預金に置いておくよりもわずかだが有利である。
第2に、証券会社に預けておけば、いつでも投資資金をマーケットに投入できるからだ。私の経験からして、マーケットが暴落してバーゲンセールが始まってからおっとりと資金を移動するようでは機を逃すときもある。投資できるお金は瞬間的にマーケットに投入できる証券会社に置いておく。面倒なようだが習慣になるとそれも楽しみになってくる。
第3には、これは精神的な理由だが、普通預金にこれしかないという状態が自分自身の稼ぐ原動力(飢餓感)となるからである。もし、普通預金に数百万円という大金があったら、気持ちに余裕ができてハングリー精神を失くしてしまいそうだ。
投資など怖くてできないという人でも、年利1%くらいで回る元本保証型の年金保険などを毎月引き落としで買い続けるのも1つの置き場所である。円高のときなら外貨預金でも良い。もちろん、理想は専門家のアドバイスを受けて、資産の全体最適を目指す運用を始めること(自分のポートフォリオを持つこと)である。
(つづく)
北川邦弘
ファイナンシャルドクター。北海道出身、1957年生まれ。早稲田大学政経学部卒業。
総合商社勤務の後に不動産デベロッパーに20年勤務。バブル期に100億円近い債務を背負い、自宅は競売に付され預貯金も差し押さえられる。職までも失うが、友人たちの応援を受けて2002年にライフデザインシステム株式会社を設立し、新たにファイナンシャルドクターとして個人の資産運用を啓蒙する仕事で再起を遂げた。
すべての体験を糧に、100歳までたくましく生き抜く人生戦略(定年までに1億円を作るプロジェクト)の普及に取り組んでいる。早稲田大学エクステンションセンターで人気講座「心豊かに生きるためのお金のお話」を9年間連続開講中。また、オールアバウトで資産運用のプロとして「大人のお金トレーニング講座」を連載中。CFP(上級ファイナンシャルプランナー)取得者。
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