娘: じゃあ、お父さんの考えを教えて。
父: その前に、サオリ自身が導いた考えを聞かせてよ。
娘: えっ! ……い、言わなきゃならない?
父: そりゃそうだよ。自分の考えは、当然あるんだよね? さあ、話してよ。
娘: (ひと呼吸置いて、ゆっくりと)人間はさ、これまで長い歴史があるじゃない? ネアンデルタール人とかがいて、原始時代があって、石器時代とか。日本では縄文、弥生時代があって、飛鳥、奈良時代、平安、鎌倉、室町時代……で、今があるわけでしょ。
父: うん。
娘: 人間が今まで生き残り続けてこられたのは、過去の人たちのおかげなんだよね。戦争や争いは何度もあったけど、仲直りしたり、反省したり、少なくとも絶滅するまでは殺し合わなかった。
父: 戦争はいまだに起きているけど、少なくとも歴史上ではすごく減ったとはいえるよね。
娘: でしょ、今があるのは、祖先の努力の結果なんだよね。
父: 確かに。
娘: だから、私も今の平成の時代じゃなくって、未来の世界の……役に立つっていうか……。
父: 発展とか、貢献?
娘: そう、貢献! 私は、未来に貢献したい。自分が未来の人のための役に立つよう、今を頑張ることが、私の生きる意味なんじゃないかっていう考えにたどり着いたの。
父: うん(目で、「もっと話して」と促す)。
娘: 人間って、歴史上ずっと戦争を繰り返しているでしょ? 戦争をゼロにすることは難しいけど、新しい知識とかアイデアを人に伝えていくことで、戦争を減らせるかもしれないじゃない。
父: いいね、どんなことができる?
娘: 学んだ知識を本にしたり、スピーチしたりして、戦争をしている人たちの心を変えていけたら、すごいことになると思うんだ。もしも世界で起きている戦争を3分の1に減らせたら、絶対に今よりいい世界になる。
父: うんうん、そうだね。
娘: 国同士の争いって、どっちが悪いのか、そもそもどうして戦っているのか、私もよく分かんない。でも、完全な正義ってないって思ってて、どっちもどっちな気がするんだよ。
父: 戦争って、そんなもんだよね。お互いが、自分こそが正しいって思い込んでるよね。
娘: 人間が争う生き物ってのは本能だし、それはこれからも変えられない。人間は、これからもあちこちでケンカをする。でも常に減らしていく努力はできるし、するべきなんだ。
父: なるほど。
娘: 戦争の直後はきっと食べ物がなくて、建物が壊されて、社会を立て直して行くのが大変。みじめな気持ちになるかもしれない。でも戦争が続いているよりかは、ずっとマシだよ。戦争の話は例えだけど、そういうことができる人間になるために私は勉強するべきなんじゃないかって。
父: ……。
娘: だから、そういう生き方を私はしたいなって……。ねえ、聞いてる?
父: (じーんと感動して)お前、よくそこまで考えたな……。尊敬するよ。
娘: えへへへ、照れるな。
父: てっきり、抽象的な言葉で、自分の幸せだけを言うんじゃないかと予想してたから。
娘: ひどーい。
父: 「自分が幸せになるため」とか「結婚していい奥さんになって、リッチな生活を」みたいな自分本位な希望か、あるいは「毎日を一生懸命生きて、周りの人に感謝するため」みたいな、いいこと言ってるようで、実は中身のない薄っぺらなことを言うんだとばかり。
娘: 私だって、時間かけてこの考えになったんだよ。
父: 利他的かつ、未来思考ってのは、我が娘ながら素直にすごいってほめてあげたい。
娘: 利他的って?
父: 自分の損失を顧みずに、他者の利益を図るような行動のことだよ。
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