GDPの大きさでこそ中国に抜かれて世界第3位に後退したものの、日本は世界で有数のお金持ちの国であることに変わりはない。現実に大金持ちもたくさんいる。
例えば、国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)が2006年12月に公表した統計に次のようなものがある(Pioneering Study Shows Richest Two Percent Own Half World Wealth)。
世界中の個人資産を世界の人口で割ると、1人当たりの富は2万5000ドル(約200万円)だが、日本人の個人資産は平均で4倍の800万円もある。1人当たりの個人資産では、米国人に次いで依然として世界第2位。しかし、そんなお金持ちの日本人のマネーリテラシーは低く、投資下手と言われるのはなぜなのだろう。
日本人のお金の扱い方が下手なのは、その精神性にあるという意見もある。確かに、日本人は心配性で悲観的。倒産したリーマン・ブラザーズの元社員よりも、破綻寸前のギリシャ国民よりも、誰よりも未来を心配しているように見える。
心配、恐怖という感情は自己防衛本能から発生する。何億年も前から動物は過酷な自然環境の中で危険を察知し、自分の生存を守りながら生き抜いてきた。だから私たちが、心配し怖がり悲観することは種の保存の上から見れば、とても健全な性質だといえる。バカじゃ生き残れない。ある意味でこれは強みだ。
心配性は、自分の身を守るために生まれる正当な本能だが、依存することによって心配は習慣化する。例えば、景気が悪いから政府に経済対策を打てと言う、仕事がないから失業保険を出せと言う、お金がないから生活保護をくれと言う。つまり、心配することによって外部から救いの手を差しのべられる体験を続けることで、人は心配することの正当性を発見する。
また、心配することで得られること──それは、心配していれば自分の努力を放棄できできること。つまり、人は心配することで何もせず、自分が前向きに行動することを回避してしまうのだ。
もちろん、1億円もの資産を作ろうと考える人は安全志向のままではいない。1億円を作れる人は、ただ心配するだけの人生なんて楽しくないと考えている。
私のお客様の中にも心配性な人が数人いた。しかし、私のアドバイスによって考え方を一変させた。今、彼らが実践しているのは、明確な希望を持ち続けること。たとえ順調な道のりでなくても、その現状を肯定的に意味付けること。そして、感情を克服するルールを持つことである。
具体的にいえば、彼らはみな自分の人生の「ある目的」のために、お金を増やす必要を感じている。そのためには30年後までに1億円を作ることを命題と考えている。
しかし、世の中そうはうまくいかない。世界金融危機や天災地変で順調にはいかないのだ。それでも彼らは腐ることなく、この厳しい時代に適合した投資ポリシーを見つけ出して挑戦を続ける。うまくいくまで選択肢を探し続ける。こんなふうにして、たくましく投資を続ける人たちがいるのだ。
命の次に大切なお金だから、心配する気持ちも分かる。しかし心配に安住せずに、その心配を解消するアクションを起こせる気持ちを持っていたいものである。
あのヘレンケラーは、こう言っている。
「人生とは果敢なる冒険、さもなければ無である」と──。
(つづく)
北川邦弘
ファイナンシャルドクター。北海道出身、1957年生まれ。早稲田大学政経学部卒業。
総合商社勤務の後に不動産デベロッパーに20年勤務。バブル期に100億円近い債務を背負い、自宅は競売に付され預貯金も差し押さえられる。職までも失うが、友人たちの応援を受けて2002年にライフデザインシステム株式会社を設立し、新たにファイナンシャルドクターとして個人の資産運用を啓蒙する仕事で再起を遂げた。
すべての体験を糧に、100歳までたくましく生き抜く人生戦略(定年までに1億円を作るプロジェクト)の普及に取り組んでいる。早稲田大学エクステンションセンターで人気講座「心豊かに生きるためのお金のお話」を9年間連続開講中。また、オールアバウトで資産運用のプロとして「大人のお金トレーニング講座」を連載中。CFP(上級ファイナンシャルプランナー)取得者。
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