「アベノミクス」は本当に成功するのか藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2014年02月05日 07時30分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

「アベノミクス」に対する海外投資家の反応

 日本と米国は同盟関係にあるが、日本とEUは安全保障上の同盟関係にあるわけではない。EUにとって日中関係はとにかく平穏でいてほしいのだ。なので、安倍首相の靖国参拝は「わざわざ中国の反発に油を注ぐような真似をしなくても」と思っただろうし、ダボスでの発言には仰天したはずだ。第一次世界大戦の英独になぞらえるとしても、「日本は当時の過ちを繰り返すことは絶対しないし、中国もそんなことはしないと信じている」というメッセージを強く打ち出すことが必要だったはずだ。

 そういった外交的な失点があっても、日本経済が長い停滞から抜け出せれば、安倍首相の功績は大きく、海外諸国も惜しみなく賞賛するだろう。ここまではよい。問題はここからだ。2014年6月には新しい成長戦略を発表することになっている。

 ダボス会議の基調講演に招かれた安倍首相は、岩盤規制(役所や業界団体が強く反対し、緩和や撤廃が容易にできない規制)のすべてに穴を開けるという主旨を語った。これは画期的なことだ。自民党の総裁が自党の支持基盤かつ、反発する族議員も多い岩盤規制を攻撃対象とすることを世界的に宣言したのだ。これが一部でも実現すれば、日本の株はさらに買われるかもしれない。

photo 1月30日に安倍首相は総理大臣官邸で、第2回国家戦略特別区域諮問会議を開催した。そのあいさつで「国家戦略特区は、安倍政権の成長戦略の要となる規制改革の突破口」と述べている(出典:首相官邸ホームページ)

 一方、外国人投資家の不信感も急速に広まっているのだという。それはこうした規制緩和が抵抗にあって進まないのではないかという見方だ。その不信感に根拠を与えてしまえば、外国人投資家は“日本売り”に回るだろう。その結果、円安/株安/債券安というトリプル安に見舞われる可能性もあり得る。

 安倍首相は、今のところうまく行っている。しかし、日本経済に本当に回復力がつくのはこれからの話だ。第一の矢、第二の矢が“尽きる”までに、第三の矢を打ち出すことができなければ、安倍首相の功績は一気に消し飛ぶことになる。そのシナリオはあまり考えたくないほど悲惨なものだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.