出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
「私たちはアジアでの軍拡を抑制しなければならない。さもなければ歯止めが利かなくなる」
2014年1月、スイスで行われたダボス会議で基調講演を行った安倍晋三首相は、中国を名指しはしなかったものの、そう語って中国をあらためて苛立たせた。そして「アジアで平和と安定が揺らげば、世界への波及効果は甚大だ」と続けて、日中関係の重要性を世界規模の問題だと主張した。
しかも記者との懇談で、第1次大戦に向かう英国とドイツの関係に触れ、現在の日中関係があたかも衝突に向かっていると言わんばかりの発言をしたために、世界中のメディアで話題になった。中国が「安倍首相はアジア最大のトラブルメーカー」などと非難の声を挙げているのはもはやここで言うまでもない。
日中関係については、やはり2013年末の靖国問題が今も尾を引いている。就任1年のタイミングで安倍首相が靖国神社を訪問してから、中国は世界の国々に駐在する中国大使を使いながら、巧みにスピン活動(情報操作活動)を行っている。
中国は世界中で安倍首相に対するイメージを貶めるために、50カ国で寄稿文など中国側の主張を掲載した。もちろん日本大使もいくつかの国で反論を寄稿しているが、中国の勢いの前に劣勢を強いられている感じは否めない。
そんな中でも、当の安倍首相本人はマイペース。ダボスで中国の軍拡が地域を不安定にすると言い、不注意な衝突を示唆し、しかも緊張緩和のための計画はないとも言い残し、ダボスを去って行った。
そして、すぐにインドを訪問した。日本に対して非常に好意的なインドで、昭恵夫人や国家安全保障局(NSC)の谷内正太郎局長とともにマンモハン・シン首相の自宅での夕食会に招かれるなど、接近ぶりをアピール。そんな様子をインドとライバル関係にある中国は、憤まんやるかたない思いで見ていたに違いない。
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