Facebookが2000億円出して買ったベンチャー「Oculus」って知ってる?没入型HMDが普及する未来とは(1/4 ページ)

» 2014年04月18日 08時00分 公開
[山崎潤一郎,Business Media 誠]

著者プロフィール:山崎潤一郎(やまさき・じゅんいちろう)

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。近著に『コストをかけずにお客さまがドンドン集まる! LINE@でお店をPRする方法』(中経出版)がある。


photo ゴーグル型ヘッドマウントディスプレイの「Oculus Rift」。名前の由来は、ラテン語の「目」(Oculus)と「亀裂」(Rift)だ

 突然だが、Oculus VR(オキュラスブイアール)という企業をご存じだろうか。米国カリフォルニア州で2012年に創業した非公開企業だ。ここは今、世界で最も勢いのあるベンチャー企業と言っても過言ではないだろう。2014年3月下旬に、米Facebookが約20億ドル(日本円換算で約2000億円、2014年4月現在、以下同)もの金額を出して買収したためだ。

 Oculus VRが開発、販売する「Oculus Rift」というゴーグル型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は以前から、3Dゲーム愛好家や開発者から注目されていたのだが、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、この製品に目を付けたのだ。彼はコミュニケーションツールとして、モバイル機器の次に仮想現実(Virtual Reality、VR)の時代が来るとしており、VRの旗手としてOculus VRを買収したと自身のFacebookで語っている。

 HMDという製品ジャンルに関して言えば、ソニー、セイコーエプソン、ニコンなどのグローバル企業の製品も以前からあった。なぜ、米国のベンチャー企業の製品がここまで評価されたのだろうか。

「仮想現実」に浸りきるために作られたヘッドマウントディスプレイ

 これにはいくつか理由がある。まずはOculus Riftが実現する「没入感」だ。Oculus Riftは仮想現実の“世界”に入り込めることに重点を置き、それを安価に実現するために、(ある意味)余計な機能を徹底して削ぎ落としている。

 この没入感、文章ではなかなかその迫力を伝えにくいのが実情だ。動画共有サイトのYouTubeに、Oculus Riftを装着した人の反応をまとめた動画があるので、こちらをご覧いただければと思う(参考リンク)。皆腰砕けになったり、人に体を支えてもらったりしながら、ワーワーキャーキャーとOculus Riftが作る仮想世界に入り込んでしまっている。

 ユーザーが仮想世界に入り込めるように、最大110度という広い視野角を実現した点もOculus Riftの強みだ。装着してみると、上下左右に黒い枠の存在を感じるものの、投影されたコンテンツに意識が向かうと、枠の存在は気にならなくなり、映像が視野を覆う。

photo 広い視野角や3軸モーションセンサーにより、仮想世界に浸る経験が味わえる。ノートPCには裸眼立体視3Dの画像が表示されている

  これまでのHMDは、映像を仮想の大画面で楽しむ、現実の視野に情報を付加的に投影するといったコンセプトが中心で、没入感を重視してこなかったところがある。ソニーの製品などは、同社の家庭用据え置きゲーム機「PlayStation」を接続し、ゲームの世界に入り込む利用方法も推奨されているが(参考リンク)、視野角は約45度とOculus Riftに比べてかなり狭い。

 とはいえ、基本的にHMDはホームシアター系の製品がほとんどだ。映画館のような四角いスクリーンを仮想的に大きく投影することが目的なので、仮想現実の世界を楽しむために開発されたOculus Riftとは、同じHMDでも目的が大きく異なる。単純に比較できるものではない。なお、話題となっている「Google Glass」もHMDの一種だが、これはあくまで現実世界の視界に、情報を付加する拡張現実(Augmented Reality、AR)に分類される。もちろんこれも、仮想現実の世界に浸るためのものではない。

 このように没入感に特化したOculus Riftの最も大きな特徴は、3軸対応のモーションセンサーを搭載したことだ。頭の向きや角度を認識して、即座に(というかほぼ同時)画面に反映するため、顔を向けた方に視界が広がるように感じる。これが仮想世界への没入感を一気に高めてくれる。

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