このような没入型のHMDはOculus Riftが初めて、というわけではないが、これまでは企業、官公庁、軍事産業での利用といったレベルの話が中心で、機器やシステムも高価だったため、一般消費者には縁遠い存在だった。例えば日本では、2016年の東京オリンピック招致活動の一環で、競技場の建設予定地を視察したIOC委員に、HMDを装着させ施設の完成CGを見せるなどしていた。また、古代遺跡の様子をCGで見せる実験なども自治体を中心に行われていたという。
一方のOculus Riftは、開発者用キットながら300ドル(日本円換算で約3万円、クラウドファンディング出資者への見返りとして提供)という低価格を実現している。クラウドファンディングサービス「KICKSTARTER」で、目標額の25万ドルをはるかに上回る243万7429ドル(日本円換算で約2億4600万円)の調達に成功しているだけに、製品に伴って大きく値上げするとは考えにくい。実際に、3月末に高性能な第2世代開発者用キットが発売したが、価格は350ドルに抑えられている。
Oculus Riftビジネスへの参入を進めているアップフロンティアのプロデューサーである藤間寛氏も「これまでのHMDとは異なり、余分な機能を徹底して省いたシンプルな作りが安さの秘密だ。その発想はコロンブスの卵」と感嘆の声を寄せる。
ただし、コストダウンのしわ寄せか、欠点も指摘されている。Oculus Riftは解像度1280×800ドットの7インチディスプレイを採用しているが、昨今のスマートフォンを下回る解像度は、お世辞にも高いとは言えない。そのため、頭を早く動かしたときは残像現象で視界がにじんでしまう。
また、曲率の高い凸レンズを組み込むことで、視野角を大きくしているのだが、映像の歪曲を抑えるために、逆側に歪曲した映像を送出して調整しているためか、妙な違和感を感じる場面もある。筆者は大丈夫だったが、これらが原因で「バーチャルリアリティー(VR)酔い」を起こしてしまう人もいるという。ちなみに、Oculus Riftは基本的に裸眼で着用するため、視力1.0以上用、軽い近視用、近視用と視力に合わせた3種類のレンズが用意されている。
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