なぜ米国ではなく、ドイツに? ビッグデータを構築した男が選んだ道上阪徹が探る、リクルートのリアル(5/5 ページ)

» 2014年05月16日 08時00分 公開
[上阪徹,Business Media 誠]
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ドイツを選んだ理由

 中野氏自身、「Hadoop」導入後に驚いてしまったという。ビッグデータ活用だ。

 「実は、これほど高度な分析が繰り広げられるとは、まったく思っていなかったんです。今はデータサイエンティストが社内にたくさんいますが、やっぱり餅は餅屋だと感じます。だから、彼らが使うことのできる計算資源を準備したという感覚はありますけど、こんな魔法みたいなことができているのは、驚きなんです。とても僕ではできない。それこそネットの記事を見て、『今のリクナビってすげえ』と思っちゃいましたから(笑)」

 現在は、2012年に生まれたリクルートのテクノロジー基盤の最先端のR&Dを担う、アドバンスドテクノロジーラボに所属する。R&Dを志向するギークなエンジニアたちが集まる組織だ。「Solr」「Hadoop」に続く技術もテーマのひとつだが、エンジニア集団リクルートテクノロジーズの若い社員たちが、よりアクティブに、グローバルにつながり、成長していける場づくりも強く意識する。その結果として今、仕事の拠点にしているのが、ドイツのベルリンである。2013年10月から、ここにやってきた。

 「シリコンバレーの次に、どこかTechハブとして出てくるか。僕が興味を持ったのが、ベルリンだったんです。技術をもらってくるというよりも、何かしらの形でリクルートとコラボレーションできるような接点を作れないか、というところに強い興味を持っています。そうすると、ドヤ顔する相手が、日本国内のエッジなエンジニアだけでなくて、グローバルに広がって、よりドヤ顔できるじゃないですか(笑)」

 ドイツのベンチャーと、お互いに影響を与え合い、刺激し合う。そんな新しい関係を築きたいという。

 「これはシリコンバレーの『Hadoop』もそうなんですが、実際に作っている会社って、ものすごくがんばっているし、ピュアなんです。でも、間に商社が入ったりすると、コミュニケーションロスでもったいないことが起きる。これは非常に損な状態です。同じ地にいることで、そういう残念な関係性を変えたい、という思いは前から持っていました」

 リクルートという会社をドイツで紹介するとき、改めて感じたことがあったという。

 「200個以上の商用サイトを運営していて、2万5000人ががんばってる会社、って言っても伝わらないんですよね。結局、リクルートがやろうとしているのは、情報格差を是正することだと改めて思いました。情報が氾濫しているのをどうにかするという意味でもそうだし、情報が入ってこないという人たちをなんとかするというのもそう。効率よく届ける会社。それは、グローバルにおいても本質的に必要なことだし、理解してもらえるんです」

 リクルートで得たものは、という質問には、すぐに返答が来た。

 「これは大学院時代の同級生にも言われますが、人を巻き込む力かな、と思います。何か実現できそうな自信というか。リアライズな経験ができたというか。それを考えると、『この椅子をいつでも売ってこられる』と言ってくれた、初めて会ったリクルート社員に本当に深みを感じるわけです。種類は違うんだけど、要するにそういうことだなあ、と」

 アドバンスドテクノロジーラボでは、インターネットデバイスのみならず、スマートデバイスの次を模索したり、脳波や音声認識などの次世代インタフェースの研究開発も進んでいる。もしかしたら数年後には、リクルートはまったく違う会社イメージを持って、世界から受け止められているかもしれない。

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