なぜ米国ではなく、ドイツに? ビッグデータを構築した男が選んだ道上阪徹が探る、リクルートのリアル(3/5 ページ)

» 2014年05月16日 08時00分 公開
[上阪徹,Business Media 誠]

困ったことが起きている

 最先端技術を常に追いかけている中野氏だが、社内の同僚や異分野の同期たちとのコミュニケーションは今も大事にしている。よく飲みにも行っていた。そんな中で、困ったことが起きているということを聞いていた。リクルートのネットサービスはどれもユーザー数がとてつもなく大きい。そのデータを高速に処理、分析できないという課題だ。

 「ある程度、大きくなったデータを処理するのに、がんばってお金をかけて商用アプリケーションで対応するのもひとつの方法です。しかし、オープンソースだったら、どんな解があるのか、みたいなことも頭の中にはずっとあったんです」

 2010年に「Hadoop」と出会ってからは、同僚と2人で「Hadoop」の実力を証明するために、人知れずテストを繰り返した。ある程度、結果が出たタイミングで上司に報告。継続して形にしていくためのチームを発足させ、導入を委ねた。

 「Hadoop」の活用で、それまで数十時間から数日かかっていた大量のデータ処理を、数分から数時間に短縮できるようになった。実際、『じゃらんnet』を使った実験では、それまでの分析ツールでは約100時間かかっていた処理を約1時間で終えることができた。

 今でこそ「Hadoop」は名だたる先進企業が採用しているが、実は使いこなすのが非常に難しい技術だとされる。リクルートの各事業でも利用できるよう、簡易に使えるツールも併せて作った。これによって、膨大なデータ集計・解析が可能になり、複数サイトをまたいだカスタマー分析、レコメンドやアクセスログの解析精度の向上などが実現した。

 中野氏は2012年、新しい価値の創造を表彰する社内制度「ARINA」を受賞する。「Hadoop」導入で、競合として戦っていくネット先進企業と、サービス開発で対等に戦える基盤を作れたからだ。実際、「Hadoop」のカンファレンスでは、楽天やDeNAの技術者と並んで事例発表を行っている。先進IT企業としてのリクルートが、表舞台に登場した瞬間でもあった。

 「何か新しい技術があって、これは、と思ってパクっと食いつく。僕はそれが好きだし、それが今のR&D(研究・開発部門)の仕事でもあるわけですが、上長もそうですし、会社にも先見の明がやっぱりあったと思うわけです。これは、と思ったらガッとリクルート全体に仕掛けていったわけですから。それが、ビッグデータという波の中でも、リクルートが前のほうに乗れている一番の理由だと思います。僕が見つけるのが早くても、乗れないと意味がないですから。それにちゃんと乗れているのが、リクルートという会社の技術的センスかなと」

コミュニケーションを大切にしている、という中野氏

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