新システムを利用したブレインストーミングの進め方は、具体的にどうなるか。
まず、会議の参加者は、ノートPCやスマートデバイスなどで専用サイトへアクセスする。そして参加者は会話をしながら、専用サイトにアイデア(言葉)を記入していく。ホワイトボードへの記入したり、付箋(ふせん)や短冊などに書いたアイデアを張り、会議を進めるのと同じ感覚だ。
「未来の会議室」はここから先進のIT技術を使う。人工知能(AI)を利用したブレインストーミング支援システムが、参加者の記入した言葉を認識し、さらに単語を解釈し、連想される言葉や類似する言葉を自動提示する。参加者はシステムが示す言葉をヒントに、新たなアイデアを発想できるという仕組み。さらに、その新しい言葉をシステムへ入力することでより進んだアイデア出しにもつなげられる。
会議で発想したアイデアはブレインストーミングのテーマごとにサーバで保管し、関係者限定で共有できる。こちらは会議の前後に担当者がアイデアを膨らませるために利用することできるだろう。
こうした流れで利用する新システムの中核が「人工知能の技術」である。ブレインストーミングの中で多様なアイデアの創出につながる、あるいは自身では思いつかなかったヒントを多数提示できる。そこで使われる人工知能の技術は、日本ユニシスが電通および米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボと協力して2010年9月から推進している、人間のような常識を備えた人工知能に関する取り組みの一環「空気が読めるコンピュータをつくろう」プロジェクトで得た知見を活用した。
その知見をもとに、日本ユニシスが蓄積してきた86万件以上の膨大なデータを応用し、かつ大日本印刷と共同で開発した独自のアルゴリズム(計算方法)によって、連想語、類似語、反対語など、多様な観点でヒントを提示する。同時に、よりよいアイデアの創出に向け、提示するヒントの質や量も向上させていく構えだ。
両社は今後の計画として、まず2014年秋から社内会議で実証実験を行い、2015年初頭に商品化を目指す。
商品はソフトウェアベースだが、クラウドサービスとしての提供や、会議室を運営する企業、事務機器メーカーとの連携による展開も図っていく予定だ。技術面では、画像認識による手書き文字入力や音声入力、ジェスチャーによる操作など、さまざまなユーザーインタフェースも組み込んでいきたいとしている。
取材の最後に、新システムのイメージについて「会議室をクラウドにつながったロボットと見立て、人間がその体内に入り、クラウドから知恵を得たロボットの支援を受けて、アイデア創出に向けた会議を行うといった感じだ」(羽田氏)と語ったのが印象的だった。
これは進化するITが、人間の知的創造活動を支援する象徴的なプロジェクトといえるだろう。商品化されれば、ぜひ導入し、試してみたい「未来の会議室」である。
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