土肥: 動物界に、数が増えたことによって問題が起きたというケースはありますよね。
竹内: 米国の五大湖のひとつスペリオル湖にロイヤル島という大きな島があります。岸から20キロほど離れているのですが、冬場は湖が凍ります。そうすると、地続きになるんですよね。そのタイミングを利用してヘラジカが島に渡ってしまいました。ヘラジカの天敵はオオカミなのですが、そのロイヤル島にオオカミはいませんでした。その結果、爆発的に増えました。どんどん増えていったので、やがてエサがなくなってきました。そうすると、ヘラジカも減ってきました。
それでもまだ多かったときに、オオカミがやってきました。ある冬、地続きになったタイミングで、オオカミが岸から渡ってきたんですよね。オオカミはヘラジカをどんどん食べていって、その結果、バランスがとれていったんですよ。
土肥: ヘラジカは「自分たちは増えてしまったなあ」とか「減ってしまったなあ」という認識なんてしていませんよね。目の前にエサがある限りそれを食べ続け、どんどん子どもを増やそうとする。しかし、エサが少なくなって、仲間がどんどん減っていき、ひょっとしたら絶滅していたかもしれない。そんなタイミングで、天敵のオオカミがやって来たことで、うまく調整してくれたんですよね。ということは、ヘラジカにとってオオカミがやって来たことは“よかった”ことになる。
ヘラジカと違って人間は「自分たちは増えてしまったなあ」「減ったなあ」ということは認識できます。でも、想像することが苦手なのかなと。どういうことかというと、東京都内で通勤電車に乗っていると「人が多いなあ」と感じる。首都高を走っていると「クルマ(人)が多いなあ」と感じる。人が多いなあと感じることはできるのですが、「多過ぎることが問題」と想像できる人って少ないのではないでしょうか。むしろ「日本人が減ることのほうが問題」と感じている人が多いと思うんですよ。
「経済」という視点でみると、「人が増えることはよいこと」とされています。じゃあ、なぜ「人が減ることはよくない」ことを想像できるのかというと、不景気を経験しているから。バブル経済が崩壊した、リーマンショックがあったときのように長期にわたっての不景気を経験しているので「人口が減ったら景気が悪くなる。また、あのときのように給料が減るのは嫌だな」と想像できる。
でも、人が増え過ぎることによる弊害は、経験したことがないので想像できないんですよ。環境問題などに詳しい人は「自然界の中で人が増えすぎることは問題」と指摘しますが、一般の人はそのことを頭で理解することができても、自分のことと受け止めることが難しいのではないでしょうか。
話がちょっと長くなってしまいましたが、そこで竹内さん。この日本の人口問題について、どのように思われていますか?
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