派遣という働き方に新たな価値を――VSN 川崎健一郎社長「働きがい」をどう生み出すか(1/3 ページ)

» 2014年10月09日 08時00分 公開
[池田憲弘,Business Media 誠]

 派遣の働き方を大きく変える可能性を秘めた労働者派遣法改正法案が、9月29日に始まった臨時国会で提出された。法案施行の目標が2015年4月と短いこともあり、審議がどう進むか注目が集まっている。法案が可決すれば、派遣業界の動向への注目も高まるだろう。

 Business Media 誠では以前、労働者派遣法の改正について、エンジニア派遣大手「VSN」の代表取締役社長を務める川崎健一郎氏に話を聞いている(参考記事)。実は川崎氏は、VSNの社長であるとともに、人材サービス世界最大手「アデコ」日本法人の社長も務めている人物だ。38歳という年齢で2つの企業を指揮する若きリーダーが、現在VSNで取り組んでいるのが、「バリューチューン・イノベーター」という技術者派遣の新しい形だ。

 バリューチューン・イノベーターとは、社員の働きがいを高める取り組みだという。なぜ高まるのか。派遣業界の未来はどのように変わっていくのか? 川崎氏に話を聞いた。

2つの企業の社長になるということ

川崎健一郎氏。アデコ日本法人とVSN、2社の社長を兼任している

――ちょうど前回、インタビューに応じていただいたころに、アデコの社長にも就任されたのですよね。派遣業界で2つの会社の社長を兼任するのは、珍しいケースだと思うのですが、どのような経緯で両方の会社のトップになったのでしょう?

川崎: 私自身は1999年にVSNに入社し、エンジニアや営業といった職務を経て2010年にVSNの社長に就任しました。その後、社員がグローバルに活躍できることや、社員の働きがいを追求するという目的のもと、2012年に人材サービス業界で世界最大手のアデコグループ(注:アデコの本社はスイスにあり、60カ国以上で展開している)の傘下に入るという形を取りました。アデコ日本法人の社長になったのは今年(2014年)の6月のことです。

 VSNは技術者を正社員として雇用し、顧客企業に派遣する「正社員派遣」を手掛ける会社です。一方、アデコは仕事の発注に応じて随時人員を派遣する「登録型派遣」を中心に手掛けています。働き方が多様化が進むなか、グループとして、より多くのニーズに対応できる人材サービス会社になったと考えています。

 私の場合は、登録型派遣と正社員派遣の両方を見ていることになります。これは珍しいケースかもしれませんね。

 →「3年ルール」撤廃へ:厚労省はなぜ今、派遣法を改正しようとしているのか? (参考記事)

派遣として働くメリットとは?

――なるほど。一般的に正社員で就職するというと、メーカーや商社といった企業を目指す人が多いと思いますが、正社員派遣として働くメリットはどういったところにあるのでしょうか。派遣と言うと“不安定”というイメージを持たれる人も多いと思いますが。

川崎: 「派遣=不安定」ということはありません。まず、VSNのように派遣事業者が正社員として雇用する場合、基本的な待遇は一般的な企業の正社員と同じです。

 ビジネスパーソンであれば、誰しも感じたことがあるとは思いますが、企業に勤めていると、やりたい仕事だけをやるというのはなかなか難しい。一方で、派遣事業者は多くのクライアントからさまざまな案件を依頼されます。一般的な企業に比べて、選択できる仕事の幅が広く、「やりたい仕事をやりたい」という社員のニーズに応えやすい環境であるところはメリットでしょう。

 年齢が高くなっても“前線”で働ける、というのもポイントですね。多くの企業では年齢が上がると管理職になるキャリアが主流ですから。また、サービス残業が発生しにくいという特徴もあります。

VSNではエンジニアを正社員として雇用しているが、未経験者も多く採用しており、研修など教育支援に力を入れている(提供:VSN)

――ちなみに、VSNに働いている人の年齢はどれくらいなのでしょう?

川崎: 基本的には一般的な企業と同じく、60歳を定年としているので20代〜50代の人がいて、社員の平均年齢は約29.3歳となっています。退職後にトレーニングセンターで研修講師として働いている人もいますね。70歳近い人もいるんですよ。

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