「35歳限界説」は本当か? バリューチェーン・イノベーターという成功事例退職者の数が3分の1に(3/4 ページ)

» 2014年12月04日 03時00分 公開
[ふじいりょう,Business Media 誠]

――クライアント先の部署を横断する、さらに提案するだけではなく、自らその提案を実行することができるというのがポイントになるわけですね。具体的にはどういった提案をしているのですか?

馬場: 例えば、あるソリューション会社の場合。営業マンがどんどん案件を取ってきても、エンジニア側では、「仕様や予算、工期的に無理があって受けられない」と言う。このギャップが問題となっていました。そこで我々は、営業サイドにエンジニアを派遣して同行してもらうことを提案しました。その結果、受注が数億円増えることになって、案件が上手くまわるようになりました。

――部門との間にあったギャップを埋めるために、どういったことができるか、ということでしょうか?

馬場: 自分の部門と関連する部門を巻き込む改革によって、成果が大きくなるのだと思っています。部門ごとの価値観の違いが問題を起こすので、それを解消する提案をするというのが、バリューチェーン・イノベーターの一つの提供価値だと考えています。お客様自身では変えられない組織のしがらみを、両方の部門にいる第三者だからこそ提案して変えることができます。

――提案先のクライアントの反応は? いい顔をしないケースもあるのではないですか。

馬場: 最初は「他社が口を出すな」と抵抗されるかと思っていたのですが、提案が嫌がられるケースは全体の5%くらいで、残りは「どんどん提案してくれよ」とおっしゃって頂けますね。これもお客様先にいるエンジニアが信頼されているからこそですが。

――成果を求められるプロジェクトマネージャーがバリューチェーン・イノベーターに取り組むというのは理解しやすいのですが、専門的なスキルを持つエンジニアなどは、どのように関わっていけばいいのでしょうか。

馬場: 例えば、リッツ・カールトン(ホテル)のスタッフは、それぞれに得意分野があっても全てのホテルマンがお客様へのホスピタリティを必ず持っている。それは我々にも共通点があると思っています。プログラミングが得意だったりマネジメントが得意だったりする人がいても、お客様先の問題点を見つけて改善するマインドはVSNの全社員が持とう、と。全社員に徹底することに一番価値があって、だからこそ我々と競合さんとの大きく違うブランドになるのだと思います。

――スペシャリストも、現場での問題を解決するためにできることをやる、と。

馬場: バリューチェーン・イノベーター活動をする時に、現場のエンジニアも入って問題の協議をやっていくのですが、リサーチの段階や問題解決の段階で、スペシャリストだからこそ言える意見があります。例えばプログラミングでデバック作業に時間がかかっていることが問題だった際、他の会社に行っているエンジニアから「自動化できるツールがあるよ」と指摘され、それまで数百時間かかっていた工程が現在で数十時間まで短縮されました。技術に詳しい人がいたからこそ提案できた事例だと思います。

――とはいえ、クライアントに提案するスキルも必要になってくると思います。特にプレゼン能力が求められるのではありませんか?

馬場: はい。既に定型化された手法があって、それを駆使して問題を特定して解決策を提示しています。プレゼンをする際には、目標やKGIやKPIといった定量化した指標を必ず入れるように指示しています。また、現在では現場のリーダーを集めて、バリューチェーン・イノベーターの手法を具体的な例を使う研修を実施しています。さらに社内に26名いる「VIプロフェッショナル」が実行の段階でサポートする体制になっています。

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