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» 2014年12月05日 08時00分 公開

「きかんしゃトーマス」は成功、自治体とは絶縁寸前? 大井川鐵道に忍び寄る廃線の危機杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

[杉山淳一,Business Media 誠]

「金をくれなきゃ走らない」と「ご支援は心苦しいからやめたい」

 鉄道会社の支援要請について、自治体はどんな判断をするか。対照的な事例として、2011年の十和田観光電鉄と2013年の弘南鉄道大鰐線の存廃問題(関連記事)を紹介する。

 どちらも青森県の私鉄である。十和田観光電鉄は鉄道事業のほか、バス、リゾート事業なども手掛ける。弘南鉄道は鉄道事業のみ。都内でもたまに見かける弘南バスは1941年に弘南鉄道から分社化されている。

 結果から言うと、十和田観光電鉄の鉄道部門は自治体の支援を受けられず廃止。弘南鉄道大鰐線は自治体の支援を受けて存続している。その差は何かと言えば「沿線自治体と鉄道の価値を共有できたか」に尽きる。

 以下は報道当時の私の印象であって事実とは違うかもしれない。その上で話を進めると、十和田観光電鉄と弘南鉄道は廃止表明の態度に決定的な違いがあった。

 十和田観光電鉄は、既に経営合理化のために終点の十和田市駅のビルを売却し、駅を賃借していた。そのビルオーナーから「再開発計画のため契約更新無し、期限までの退去」を求められていた。鉄道を存続するには、十和田市駅の手前に新駅を作る必要がある。もちろんその敷金のめどは立たない。故に十和田観光電鉄は沿線市町村に10年間で10億円の支援を要請した。しかし自治体は「経営改善は不可能」と判断した。十和田観光電鉄はこれを理由に、廃止届と運行休止届を同時に提出した。

 鉄道路線の廃止許可は届け出から1年後であるが、公聴会の結果によって、半年の繰り上げが可能だ。しかし、十和田観光電鉄の場合は、休止届の同時提出という奇策を講じて、廃止されなくても列車を止めると宣言した。まるで運休を人質に支援を引き出そうとしたように見える。これも地元自治体の心証を悪くしたのだろう。公聴会でも廃止反対の声は小さく、結果として鉄道事業は廃止となった。

 弘南鉄道の場合は既に自治体からの支援を受けていた。しかし弘南鉄道は「これからも黒字化する見込みながなく、これ以上のご支援をいただくにはしのびない。やめさせていただきたい」という懇願であった。これに対して自治体は「支援しますから続けてください、支援が足りないなら、みんなで知恵を絞りましょう」と応援した。

 別の見方もできる。十和田観光電鉄の場合、バス事業が代行バスをすぐに運行できる。十和田観光電鉄は2007年に親会社の国際興業が支援して立て直し、2008年から新体制になっている。国際興業からのバス事業支援の結果、沿線自治体からはバスに対する満足度が高く、鉄道への重要度が低かったかもしれない。一方、弘南鉄道のほうは「情に訴える知略の勝利」かもしれない。

 どちらも私の意地悪な想像に過ぎないけれど、結果として、沿線自治体の鉄道に対する価値観の違いが現れた。地元自治体にとって鉄道の価値があれば支援する。価値がなければ支援できない。それだけのことだ。

地元の支援が得られた弘南鉄道大鰐線 地元の支援が得られた弘南鉄道大鰐線

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