愛されて30周年、なぜ「ビックリマン」はいまだに売れ続けるのか?みんな好きだった(1/3 ページ)

» 2014年12月24日 08時00分 公開
[伏見学Business Media 誠]

 「はって、はられて、はり返されて!?」――。

 このキャッチコピーに懐かしさを感じる読者も多いだろう。筆者もその一人だ。小学生のころ、友人たちと熱狂し、どこへ遊びに出掛けるときにもコレクションしたシールをポケットに忍ばせていた。そう、かつて社会現象を引き起こすまでに大ブームとなったロッテのおまけシール付き菓子「ビックリマンチョコ」(以下、ビックリマン)のことである。

ピーク時には年間4億個を販売した「ビックリマンチョコ」。少年たちはこうしたホログラムのヘッドシールが喉から手が出るほど欲しかった(写真:ビックリマン公式サイトより) ピーク時には年間4億個を販売した「ビックリマンチョコ」。少年たちはこうしたホログラムのヘッドシールが喉から手が出るほど欲しかった(写真:ビックリマン公式サイトより)

 ビックリマンとは、チョコレートをウエハースで挟んだ菓子で、シールを1枚同封していた。当然、パッケージを開封しなければどんなシールが入っているか分からないため、欲しいシールを手に入れるのは簡単ではなかったわけだが、発売当初は1個30円という価格だったので、子どもたちはお小遣いをはたいて、買えるだけビックリマンにつぎ込んだのである(よく親に叱られたものだ……)。

 さて、今年2014年は、ビックリマンの「悪魔VS天使シリーズ」が誕生して30周年のメモリアルイヤー。記念商品シリーズのほか、ロッテリアが販売した「ビックリマンシェーキ」や、東京および大阪で開催した「ビックリマン原画展」、プロ野球・千葉ロッテマリーンズの主催試合でビックリマンシールなどを配布した「ビックリマンデー」など、1年かけてさまざまなキャンペーンが走っていたのは記憶に新しい。

 実は、ビックリマンという商品自体は今から37年前の1977年に発売されている。当初は「ドッキリシール」という、笑いを誘ったり、いたずらを仕掛けたりするようなシールをおまけにしていた。例えば、血のりのイラストのシールを椅子に貼って相手をビックリさせるようなものだった。その後、「ウッシッシシール」「まねまねシール」などと名称や中身を変えていったが、こうしたギャグ路線はマンネリ化していて、売り上げも下がっていた。このままでは厳しいということで、起死回生に近い形で新たに企画したのが、1985年に発売された「悪魔VS天使シリーズ」だった。2014年はここから数えて30周年ということになる。

ドッキリシール(上)とウッシッシシール(写真:ビックリマン公式サイトより) ドッキリシール(上)とウッシッシシール(写真:ビックリマン公式サイトより)

 このシリーズの特徴は、1つにはホログラムを使った「キラキラシール」を封入したことである。当時はこうした類のものはなく斬新だったという。加えて、天使、悪魔、お守りという3タイプのキャラクターの三すくみ構造で、それぞれにストーリー性とゲーム性を持たせた点もウケた。「シールをコレクションしながらストーリーが作られていく。これが人気のきっかけになった」と、ロッテ マーケティング統括部 ノベルティ企画室の本原正明氏は話す。

 同シリーズは発売からしばらくして空前の大ヒットとなった。あまりの人気ぶりに40個入り(当時)の箱を丸ごと買う、いわゆる“大人買い”をする者も現れ、子どもたちから妬みと羨望の眼差しで見られていた。一方で、商品の在庫不足が相次ぎ、一人が購入できる個数に制限をかけるスーパーマーケットなど小売店も少なくなかった。さらには、シールだけを抜き取り、菓子を食べずに捨ててしまう子どももいて、社会問題になった。

 ビックリマンは、1990年前後には売り上げがピークとなり、販売数は年間で4億個を突破した。その要因を作り出したマーケティング戦略が「メディアミックス」である。小学生に大人気だった漫画雑誌「月刊コロコロコミック」での連載、テレビアニメ放映といったメディアミックスを先駆けて行い、子どもたちにビックリマンのストーリーや世界観を分かりやすく伝えた。それがシールのコレクションのさらなる促進につながったのである。

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