先日、ある会議をしていたときのことです。担当者の一人から「兼務がさらに一つ増えることになりまして……今まで以上にご迷惑をかけるかもしれません」というあいさつを受けました。
今に始まったことではありませんが、いろいろな業務を一人で背負ってしまっているビジネスパーソンは、少なくないと思います。「仕事は忙しい人に任せたほうが上手くいく」とはよく言われることですが、それにも限界がありますし、最近ではその流れにも変化が訪れています。
ということで今回は、忙しくなりすぎているビジネス社会に対応するための、次世代の“会社のオキテ”を少しだけ。
実は現代の日本では、「人を採用する」ということそのものが、マクロ的な視点に立つと、とても難しい時代になっています。
総務省統計局が毎月発表している「労働力調査」を見ると一目瞭然。2014年11月分の速報によれば、雇用者数は5637万人。前年同月に比べて18万人も増加しています。一方、完全失業者数は219万人。前年同月に比べて30万人減、そして、54か月連続の減少となっています。220万人近くも失業している人がいるじゃないか、という声が聞こえてきそうですが、一方で労働力として見込める人数が、もうそのくらいしか残っていないともいえる。
ミクロレベルの視点に戻すと、冒頭で紹介したエピソードには続きがあります。なぜ兼務が増えてしまうのかという話になり、「人が採れない。少なくとも、仕事を任せられる人が採用できない」という、いま広く言われている悩みに加え、まったく別の悩みにも直面していると教えてくれました。
「『作業』とでも表現すればいいのでしょうか。アシスタント的な動きをしてくれる人もいないので困っています。雑務もすべて自分でしなければならないので、時間がいくらあっても足りない。ただ、そういう人は正社員で雇うことに組織としては抵抗があるらしく、結果的に派遣で、という話になります。けれども、その派遣社員の方でさえ、もはや確保するのが難しい」
ということで、「仕事をしてほしい、人を採用したい」と思っていて、企業がその費用も割いているにもかかわらず、実際には人手不足で、働く人の多くが疲弊した状態が続いているという現場は少なくないようす。しかしその一方で、別の場所では「人が余っています」、少なくとも「働きたいと思っているのだが、働けない人がいる」という声も聞こえてきます。
「例えば、『子育てをしているので、フルタイムで働くことは難しい。けれども、少しの時間なら融通できるから、自分の能力を生かして働きたい』という主婦は少なくありません。しかし、そういうパートタイムで働ける仕事は限られています。職場でのアシスタント的な業務であっても、その仕事を細分化して、役割を決めて、稼働時間の調整をすれば、十分、主婦の方にも働いてもらえるチャンスはあるはずなのに、です」
従来、雇用の需給のバランスにおいて大きな課題となっていたのは、「やりたい仕事がない、就きたい仕事ではない」というミスマッチでした。もしくは「この程度の報酬では仕事ができない」「この仕事にはこの程度のギャラしか払うことができない」という、金銭面でのミスマッチ。しかしそのどちらでもない、とはいえ大きく見ると「条件のミスマッチ」が、働きたい人が働けない、働いてほしい現場に人が来ない、というミスマッチを引き起こしているのです。
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