「働くとはどういうことなのか」という、ともすればピントが甘くなってしまいがちなテーマのディスカッションに参加するために各種調査を見ていたときのこと。統計数理研究所という機関が、とても興味深いデータを出していることに気がつきました。その名も「日本人の国民性調査」です(参照リンク)。1953年から5年ごと、継続的に行われているもので、日本人の国民性というこれまたザックリとした話がどのように経年変化しているのか、データで見られるようになっています。
そのデータを見ていて、職場で起きている「いろんな人たちの、ちょっとしたズレ」の説明をするヒントになるかもしれない、と感じました。今回はそのデータをいくつか紹介しながら、職場で起きている小さな衝突やズレの解決策、その処方箋を考えてみたいと思います。
まずはこのデータを見てみましょう。「自分の可能性を試してみたいか、それともわずらわしいことは避けて平穏無事でいたいか」というシンプルなアンケートです。グラフは30年前のデータと比較していますが、注目したいのは50歳代以上の「意欲の高さ」です。
1983年のデータを見ていると、年をとるに従って可能性を信じなくなり、現状維持でいい、という思考になっています。しかし、2013年のデータは、その傾向は残るものの、グラフが水平に近づいています。これは、若年層の意欲的なものが低下しただけでなく、一定の年齢を超えてもなお、チャレンジングな人生を送りたいと思う人の割合が増えている、ということです。
お気付きの方も多いと思いますが、このデータにも衝突やズレの種は潜んでいます。年をとっても「枯れない」上司と「意欲が低く」なった若手が同じ職場にいたらどうでしょうか。若手は上司を「いつまでも熱血で、ある意味ウザいな」と感じる可能性は高いですし、上司は若手を見て「覇気がない」と思うのでしょう。後者は以前より言われていることなので、いまさらな感じがしますが、前者は意外と見落とされていたはずです。
そこで、次にこのデータに注目してみましょう。努力しても報われないことが多いと思うか、というこれまたストレートな質問です。1988年と2013年の比較がグラフ化されていますが、一目瞭然ですね。圧倒的に報われないと答える人が増えています。ここも注目しておきたいのは、世代間のグラフの傾斜です。25年前のデータにも凸凹はありますが、傾斜はなだらかでした。しかし、2013年のデータ、特に若年層の男性は以前と比べて「努力しても報われないことがあるのだ」と思いがちという傾向が顕著です。
この結果と「意欲の高さ」との相関を考えると「努力しても報われるとは限らないし、むしろまったく報われない。だとしたら、可能性を追求しても仕方ない」――そう考えるようになってしまうのは、ある意味仕方ないのかもしません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング