先日、「消滅しつつある職業」について議論する機会がありました。その仕事(具体的に書くのは本稿では差し控えます)では、高齢化が急激に進んでいるという現場からの報告があり、若手と呼ばれる層がその職業に就いても「ニーズがないから」と、別の仕事への配置転換が行われているというのです。残ったのは「その仕事しかできない」、一定の年齢を超えた人たちだけ。
その人たちは「この仕事にしがみつくしかない」という状況なのですが、ニーズはどんどん減っていき、かつて3人でやっていた仕事を5人で分配しておこなうという状況。生活が立ちいかなくなり、結果的に仕事を離れざるを得ない事態になっているといいます。
ある職業が「その寿命を終える」瞬間に立ち会うケースが増えてきました。ものすごく特殊だったり、ある意味伝統技能的な仕事だったりするわけではなく、つい数年前までは「フツーにあった仕事」だったにもかかわらず、急激に寿命が尽きてしまうことが少なくないのです。
一方、それまで想像もしたことがなかった、それこそ私が社会人生活を始めた四半世紀ほど前には、影も形もなかった仕事が増えているのも見逃せないポイントです。国もそのことに当然気がついていて、2014年11月20日、文部科学省の中央教育審議会総会で配布された資料にも(参照リンク)、以下のような記載があります。
生産年齢人口の急減、労働生産性の低迷、グローバル化・多極化の荒波に挟まれた厳しい時代を迎えている我が国においても、世の中の流れは大人が予想するよりもはるかに速く、将来は職業の在り方も様変わりしている可能性が高い。(出典:新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(案))
この文章の末尾には註が添えられていて、そこには米国の研究者であるキャシー・デビッドソンが、あるインタビューで発言した「2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に、今は存在していない職業に就く」というコメントが記載されています。さらに、この資料では、以下のような文章が続きます。
そうした変化の中で、これまでと同じ教育を続けているだけでは、これからの時代に通用する力を子供たちに育むことはできない。この厳しい時代を乗り越え、子供や孫の世代に至る国民と我が国が、希望に満ちた未来を歩めるようにするため、国は、新たな時代を見据えた教育改革を「待ったなし」で進めなければならない。(出典:新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(案))
この中身については議論の余地がたくさんありそうですし、興味がある方は文末に参考サイトへのリンクを用意しておきますので、じっくり読んでみてください。このコラムで注目したいのは「新しい時代の教育を受けた人が、自分の部下になった時、あなたは大丈夫か」という点。
教育制度を改革したからといって、どの程度の効果が見られるのかは未知数ですが、少なくとも「今までの、自分たちとは違った育てられ方をした部下」が、あなたの元にやってくるわけです。どう育てられようとしているのか、あなたの未来の部下たちについて、少し思いを馳せてみることにしましょう。
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