どんな機能が搭載されている? シャープ、振り込め詐欺対策用の電話機被害額559億円(2/2 ページ)

» 2015年02月05日 19時54分 公開
[ふじいりょう,Business Media 誠]
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足立区で社会実験

シャープのデジタル情報家電事業本部・辰巳剛司部長

 2月5日に開かれた新製品発表会では、高齢者世帯を狙う詐欺被害の実態や当事者・家族の認識についても紹介された。オレオレ詐欺の手口としては、携帯番号の変更や会社のお金の使い込みといった話を畳み掛け、上司を名乗る別人に替わって、被害者が冷静な判断をできなくしていく。

 こういった手法は各種メディアで注意喚起がなされているが、警察庁による被害者アンケートによると「自分は大丈夫と思っていた」「考えたこともなかった」という答えが92.4%となっており、家族から見た被害者の判断能力や記憶力についても、48.4%が問題視していなかったという。辰巳部長は「(被害者本人が)社会現象が自分のことだと理解されていなかったし、家族も(被害者の)判断能力をあまり気にしていなかった」と指摘する。

 最初から常に留守電に設定しておけば、受話器を取らずに済むのではないか、という考えもある。しかし、同じ番号からの電話が再度かかってきてしまう、知り合いがかけた際にすぐに切れてしまうという問題が残り、「コミュニケーションの機会が必要にもかかわらず、接点がなくなってしまう」(辰巳部長)。特に一人暮らしの高齢者の孤立につながるという危惧も新機能開発で考慮されたという。

 社会実験を行う足立区は、人口67万4111人のうち高齢者は16万2806人と24.2%を超える。特殊詐欺被害は2013年が107件、2014年が101件発生しており、どちらも被害総額は3億円を超えている。東京都では「特殊詐欺根絶オール東京プロジェクト」を推進しており、足立区がモデル自治体に選ばれていることも今回の実験実施につながった。

 足立区危機管理室の伊藤三津夫課長によると、対象となる100世帯は区報やWebサイトで募集。アンケートやインタビュー協力に同意した世帯にモニター機器をシャープが無償で貸し出すが、実験期間後の引き続きの使用についても「検討している」とし、検証次第では購入者に補助金を出すといった施策の可能性もあるとした。シャープも他の自治体との実験や連携について「申し出があった上で、個々の案件を検討して対応したい」(辰巳部長)としている。新製品の機能が成果を上げるかどうか、注目が集まりそうだ。

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