インタビュー
» 2015年02月28日 06時50分 公開

ものづくりの原点は「人」――ASUSジョニー・シー会長インタビューカフェから世界へ(2/4 ページ)

[渡辺まりか,Business Media 誠]

ガレージではなくカフェから世界へ――始まりはわずか5人

 シリコンバレーで成功した米企業の始まりが「ガレージ」だったというのはよく聞く話だ。それに対して「ASUSTeK Computerは、カフェから始まった」とシー氏。台湾企業のAcer(エイサー)にいた4人のエンジニアたちと、彼らをマネジメントするために呼ばれたシー氏、わずか5人で会社がスタートした。

 「始めのころはビジネスというものがよく分かっていなかったが、トレーニングを積むことで、ハードとソフトの両面を理解できる集団に成長していき、それを誇りに思うようになった」とシー氏は振り返る。当時コンピューター業界ではIBMやユニシスがもっとも進んでいた。その米国にアピールしようと、寝ずに働くことも多かったという。

 まだシー氏と社員たちがAcerの所属だったころ、自分たちの技術力をアピールする機会があった。CPUが16ビットの「286(80286)」から32ビットの「386(80386)」へと変わりゆく時期だったという。

 「当時、米国ではDellが『PCリミテッド』と呼ばれていたような時代でした。それでもわれわれは、メモリーインターリーブ※という技術を使ったCPUを積んだデスクトップPCをラスベガスに持って行き、ほかのメーカーのPCと性能を競いました。その結果、386を採用していたDellを除き、どのメーカーよりも優れていることが明らかになりました。DellのPCも優れていましたが、残念なことに非常に高価なSRAMメモリを使っていたため、一般の人が購入するには高すぎる金額になってしまい、結果としてわれわれの(286用マザーボードで組んだ)マシンがPC Magazineのベストプロダクツ・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのです。これが大きなブレークスルーとなりました」(シー氏)

※メモリーインターリーブ(memory interleaving)……データ転送を高速化する方法の1つ。CPUの処理能力を最大限に発揮できるようになるが、高度な技術が求められる

ノートPCメーカー市場へ参入

 マザーボードの分野で優れた技術力が立証されたシー氏と4人のエンジニアは、その後ASUSを立ち上げた。しかし「デスクトップPCを作っていた母体のAcerと競合することから、PCメーカーとはならず、ずっとマザーボードにこだわっていた」という。

 「ところが、ノートPCという新しい市場が出てきました。『これならAcerとぶつからないので、参入してもよいのではないか? われわれならどんなノートPCでもデザインできる』という自信がありました。そこで『最も信頼性の高いノートPCを作る』ことにしたのです」(シー氏)。

 しかし、信頼性の高いものを作ろうとしすぎたあまり、完成したのは「戦車のようなPC」。熱放出性も高く、キーボードに傾きをつけられる仕様で、なおかつ頑丈だったため、宇宙ステーションでも利用されるほど信頼性の高いものだったが、「数は出なかった」とシー氏は笑う。

 そこから「学習し、それまで技術志向だった考えを、ユーザー志向へとシフトしていきました。そして、機能性だけではなく、厚みなどPCの持つ“デザイン”という側面にも気を配るようになったのです」と当時を振り返る。

技術志向からユーザー志向へ

 「それは1つのターニングポイントになりました。そのおかげでノートPCとして重要なもの――パフォーマンス、美しさ、音質の良さ、性能――これらをベストなバランスで組み合わせ、優れた製品を開発していくことができ、ビジネスを成長させる力になっていったのです」とシー氏。「そして、もう1つのターニングポイントが2008年のEee PCでした。これが爆発的に売れたため、PCメーカーとしてトップ5の仲間入りができるようになったのです」(シー氏)。

2008年発売、「199ドルノート」として話題になったEee PC(初代)

 もっとも、いくら革新的な製品を送り出しても、購入へと結びつけるためには告知とブランディングが必要になってくる。その点についてはどのように考えていたのだろうか。

 「膨大な宣伝広告費をかけるのは何か違うと思っていました。例えばEee PCの3つの“E”は、“Easy to Learn, Easy to Work, Easy to Play.”(学ぶのも仕事をするのも遊ぶのも簡単に)からとったもの。こういった分かりやすいコンセプト、メッセージが伝わったからこそ、ユーザーが増えたのだと思っています。他社が持っていないものを作り、メッセージを明確にすること、そうするとおのずとブランドというものは認知されていくのではないかと考え、それを心がけています」(シー氏)

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