インタビュー
» 2015年03月02日 08時00分 公開

ああ、絶望(前編):エリート集団の裁判所が、「ブラック企業」と呼ばれても仕方がない理由 (2/5)

[土肥義則,Business Media 誠]
最高裁事務総局民事局付などを歴任した瀬木比呂志氏

瀬木: 不自由ですね。なぜかというと、日本の裁判所には、戦前と何ら変わりのない上命下服、上意下達のピラミッド型ヒエラルキーが存在しているからです。最高裁長官と14人の最高裁判事が頂点で、その下に高裁の長官が全国に8人いて、序列は東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松といった感じ。次に東京、大阪などの大都市の地家裁所長、東京高裁の裁判長と続きます。

烏賀陽: いま挙げていただいた「役職」以外にもヒエラルキーが存在するのですか?

瀬木: はい。相撲の番付表にも似た細かい裁判官のヒエラルキーが存在しているんですよね。時によって順序が少し変わることもありますが、基本的には同じ。

 最高裁長官と事務総長の意を受けた最高裁判所事務総局人事局は、人事を一手に握っています。だから、いくらでも裁判官を支配することできるんですよ。人事局が「この裁判官、気に入らないなあ」と思ったら、その人は出世できません。例えば、本来なら東京高裁の裁判長になるような人でも「地方の高裁にとどめておく」「所長にするのも遅らせる」「所長にすらしない」などといった感じで、いくらでも可能です。

 こうした人事の恐ろしいことは、何を根拠にして行われているのか分からないということ。

烏賀陽: 分からない、といいますと?

瀬木: 例えば「この裁判官は違憲判決を書いたからけしからん」といったように、基準がはっきり分かっていれば、そのよしあしは別にして基準は明確です。しかし、左遷された理由は「何らかの意味で上層部の気に入らない判決」あるいは「論文を書いたから」なので、基準が分からないし、いつ報復されるかも分からない。その結果、多くの裁判官は、上層部の顔色ばかりうかがうようになるんですよ。

 また、気にくわないことをしたらすぐに左遷するわけではなく、時間が経ってから引導を渡すんですよね。例えば、所長になってからでさえ「あなたはもう関東に戻ることはできません。定年まで地方でどうぞ」といった感じで。言われた本人は、理由がよく分からないので、びっくりしますよね。

烏賀陽: 「オレが10年前に書いたあの判決が上の人たちのご機嫌を損ねたのか。いや、それとも、15年前に所長とけんかしたのが……」といった感じですね。

瀬木: はい。基準がなく、時間も経っているので、推測しかできません。

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