旅客機の開発・製造では、燃費効率を上げるためにいかに部品を軽量化するかが大きなテーマになる。1回のフライトごとに、売上額の3割が燃料費に消えてしまうからだ。
「部品を作るとき、従来の製造方法では材料の8〜9割が削りくずになっていましたが、3Dプリンターなら素材の9割を有効使用できます」とサンダー氏は続ける。「3Dプリントした部品は来年(2016年)から実機への搭載がスタートする予定で、その後は補修用スペアパーツの在庫を減らせることも期待されています。何万点もの部品をいちいち揃えておかなくても、必要なときに必要な場所で3Dプリントできるようになりますから」
ハンブルク工場には巨大な建屋が並び、世界最大の総2階建て旅客機A380などの組み立て作業が進んでいる。その一角で3Dプリンター技術の実用化に挑むサンダー氏の構想は、部品づくりだけにとどまらない。「このデザインを見てください」と言って、彼はツタがからまったような骨組み模型を目の前に置いた。エアバスが発表した近未来のコンセプト機だ。「2050年の旅客機は鳥の骨格を真似た、生体工学的構造になる」とサンダー氏。この模型も、彼のチームが3Dプリンターで仕上げた。
「金属パーツの3Dプリント生産は、ドイツが世界の先頭を走っています。私たちもドイツにある工場で研究を続けてきたからこそ、この技術をいち早く採り入れることができました」
近未来機の骨格モデルを、私も手に取ってみる。上下左右、どの角度から眺めても極めて精巧な作りだ。そんな時間が数分続き、熱心に見入る私の顔がサンダー氏には“物欲しげ”に映ったのか、彼はにっこり笑って「取材にくると聞いて3Dプリントしておきました。お土産にどうぞ」とミニチュア版を持たせてくれた。
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