「サマータイム」がもたらす1年で“最も危険な日”人に話したくなるコラム(2/4 ページ)

» 2015年03月26日 08時00分 公開
[藤井薫Business Media 誠]

デイライトセービングタイムの恐ろしさ

 まず、そもそもこのシステムが、実際に省エネなのかどうか疑問符が付けられている。デイライトセービングタイムの省エネ効果について知るには、2008年に発表された米エネルギー省の報告書が参考になる。「2005年エネルギー政策法」の効果を検証するための報告書だが、それによるとデータが集計された2007年は約1.3テラワット(TWh)の節電になり、4億9800万ドル(290万バレル相当の石油)を節約できたという。かなり大きい数字に聞こえるが、年間電力消費に換算すると、わずか0.03%しか影響がないことになる。

 つまり、デイライトセービングタイムが必ずしも節電になるとは限らない。インディアナ州を例に見ると分かりやすい。タイムゾーンが2つ存在する(つまり時差がある)インディアナ州では、デイライトセービングタイムを実施している地域としていない地域が混在していたが、2006年にすべての地域で実施することになった。その結果どうなったかというと、一般家庭での電力消費が減るどころか約1%も増えてしまったのだ。せっかく照明を使う時間を減らしても、エアコンやヒーターの使用量が増え、トータルでは電力消費が増えるという逆転現象になっている。

 ただ実のところ、このデイライトセービングタイムの本当の恐ろしさは、省エネ効果が期待できないという生易しいものではないようだ。もっと深刻なのは、この制度が人体に与える影響だ。

 突然、1時間も時間を失うことで人体は混乱するらしい。デイライトセービングタイムの実施で、睡眠パターンが変わることで十分に休息できず、交通事故、職場での怪我や心臓発作などが増えるのだ。米Fatal Accident Reporting System(米死亡事故報告システム)のデータによると、デイライトセービングタイム開始後の月曜日には交通事故が17%増加することが判明している。また、2012年にアラバマ大学が発表した研究では、デイライトセービングタイム開始後の月曜日と火曜日には心臓発作が10%増えるという結果が出ている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.