近年のパチンコ、射幸性が高くなり、1回当たると大きくもうかるが、その分当たりも少なく、負けが込むと1日で数万円も損をするようになってきた。通常のパチンコは玉を借りるのに「1個=4円」だが、1円パチンコは文字通り「1個=1円」。レートを低くしているので、もうけはあまりないが、少額で1日遊べるシニアにとっての「毎日の気軽な娯楽」に転換させようとしたのである。これは業界の協力もあって浸透してきた感がある。
シニアの分析というと、まず「お金」に注目されがちだが、実は「時間」に着目して、そこからお金のことを考えるべきである。先ほど紹介したお金を使わない理由「漠然とした老後の不安」も、いつまで生き続けるのかという「時間」からくる不安なのである。
シニアは「時間の逆算」で物事を考えている。人は50歳を過ぎたころから、思考の逆転が起こると言われている。それまでは、これまでの人生の延長の中で、積み上げ式に将来を描き、また夢を描いていくのだが、50歳を過ぎたころから中高年という自覚が芽生え、特にサラリーマンの場合、会社の中での立場もほぼ確定し、これからの数年間をどう生きるかという定年までのカウントダウンに入る。つまり、定年を意識し、逆算でそれまでに「やるべきこと」や「やりたいこと」を考えるようになるのである。
同様に、多くのシニアは自分が一体何歳まで生きるのかを漠然と意識して、そこからの逆算で老後の人生設計を立て始める。当然ながら、長生きすればそれだけお金もかかり、また健康への不安も高まる。いわゆる“長生きリスク”と言われるやつだが、自分はいつまで生きるのか予想がつかないだけに「なるべく多くの資産を残しておこう」という気持ちになるのも仕方ないだろう。しかし、今後、実に厄介な現象が起こりそうなのだ。
平均寿命が徐々に延び、近い将来、男女とも90歳超えになるだろう。仮に92歳の親が亡くなったとする。「老後の不安」により手つかずだった遺産がようやく「相続」という形で子の世代に受け継がれるのだが、考えてみるとこの子どもは既に60代である。子どもも、自分の老後を心配してそのお金を貯蓄し、できるだけ使わないようにする。お金は流通して初めて価値をなすのに、これではまるで“永久凍土”である。そしてこの資産の永久凍土は溶けることなく次の世代へ受け継がれていくのだ。
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