ファウルボールでケガ→賠償 プロ野球界はどう向き合うべきか赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)

» 2015年04月02日 08時00分 公開
[臼北信行Business Media 誠]

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


“ファウルボール判決”をめぐって注目すべき判決が下された(写真と本文は関係ありません)

 ファウルボールにご注意ください――。

 プロ野球観戦に行くと、このような場内アナウンスが球場では必ず流れる。しかし、いくら注意を促しても野球観戦での打球による事故は日常的に起こっているのが実状だ。野球観戦で発生した打球事故にまつわる訴訟もこれまで何度か起こされているが、つい先日、その中で注目すべき判決が下された。

 審判が下されたのは、2010年8月21日に札幌ドームの内野席での試合観戦中、ファウルボールの直撃によって右目を失明した30代の女性が株式会社日本ハムファイターズと球場所有者の札幌市、さらに管理会社の株式会社札幌ドームを相手取り、計4650万円の損害賠償を求めていた訴訟だ。

 この裁判で札幌地裁(長谷川恭弘裁判長)は3月26日、同社に対して約4190万円の支払いを命じる判決を言い渡した。原告側は「投手は打者の思い通りに打撃させないことを目指して投球するため、プロ野球でも選手でも打球の方向や角度は予想困難だ。老若男女を問わず安心して観戦できる防球ネットなどを備えておくべきだった」と主張。判決でも長谷川裁判長は札幌ドームの内野席前に設けられていたフェンスではファウルボールを遮ることはできなかったと指摘し「球場の設備は危険を防止するに足りず、安全性を欠いていた」と断じて、原告側の主張を全面的に認めたのである。

 被告側の日本ハムは「観客は打球に注意しさえすればファウルボールの直撃を回避できる。事故当時、場内の大型ビジョンやアナウンスで注意喚起もしており、十分な対策を講じていた」と反論して争っていたものの、結果は敗訴。ただし判決には納得しておらず、新たに同球団側は「野球観戦の本質的な要素である臨場感が失われることを懸念する。野球界全体に及ぼす影響も十分に考えられ、控訴を視野に検討する」とのコメントも発表した。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.