ファウルボールでケガ→賠償 プロ野球界はどう向き合うべきか赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2015年04月02日 08時00分 公開
[臼北信行Business Media 誠]

約款そのものが「無意味」なものに

 右顔面骨折や右眼球破裂の重傷を負い、右目を失明した原告の女性が本当に痛ましい事故に遭遇してしまったのは紛れもない事実だ。しかしながら日本ハムにはそう簡単に自分たちの非を認め、今回の判決を受け入れられない事情もある。「野球界全体に及ぼす影響も十分に考えられ――」という日本ハム側のコメントが物語るように、もし今回の判決が最終的に確定という形になれば、日本プロ野球界全体で取り決めたルールや方針が全面的な見直しを迫られる「一大事」につながりかねないからだ。

 実はプロ野球界には「観客の安全」と「平穏な試合観戦の確保」を目的として、日本プロフェッショナル野球組織(日本野球機構=NPBの内部組織)などが定めた「試合観戦契約約款」というルールが存在している。そこには打球事故に関して「球団側は原則責任を負わない」との規定が設けられており、仮に賠償するケースになった場合についても、その範囲は「治療費等の直接被害に限定する」とも定められている。

 この約款は2005年7月のオーナー会議で承認され、各球団の公式Webサイトや試合入場チケットに記載されていることもあって世間への認知度はそれなりに高まってはいるようだ。確かに球界内からは「以前よりも“観戦に伴う打球事故は自己責任である”ということを理解してくれる人が増えた」との指摘も聞こえてきている。

 しかしながら今回の札幌地裁の判決が確定することになれば、約款そのものが「無意味」なものになってしまう可能性も出てくる。在京球団関係者の1人は、こう指摘して表情を曇らせる。

 「これまでもプロ野球界では打球事故で負傷した人が球団側を相手取って損害賠償などを求めて裁判を起こす事例がいくつかあったが、そのどれもが判決で原告側の訴えを基本的に退けていた。ベースには約款の効力があったからですよ。ただ今回の判決でそれが反映されないということになってしまうと、約款の法的効力が否定されることにつながってしまう。ひいては、これまで不運にも打球事故に遭遇しながら『約款があるから』と許容できていた人が連鎖して“それだったら私も”と球団側に訴えを起こすことだって考えられるだろう」

(出典:北海道日本ハムファイターズのFacebookページ)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.