なぜ成田空港が「ウォシュレット押し」なのか新連載・スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2015年04月07日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

顧客へのブランド訴求を行ってきた

日本の温水洗浄便座は長い“種まき”によって、中国人の間で認知度がアップした(写真はイメージです)

 90年代に入るといよいよマスマーケットへ進出を行い、94年に各地で製造会社を設立、統括会社「東陶機器(中国)有限公司(現・東陶(中国)有限公司)」を立ち上げて、2003年からは主要都市でショールームを展開。さらには24時間対応コールセンターをつくるなど、幅広い顧客へのブランド訴求を行ってきた。

 このような長い“種まき”が報われたのが2010年だ。TOTOが中国で国家工商行政管理総局が認定する「中国馳名商標(ちゅうごくちめいしょうひょう)」に認定されたのだ。これはその名のとおり、中国において知名度が高いブランドという意味で、このお墨付きによって「憧れの日本ブランド」という地位が盤石のものとなった。

 実際にそれまでは売上200億円台でじわじわと成長していたのが、中国馳名商標に認定された翌年は一気に338億円に跳ね上がり、現在は500億〜600億円レベルまで成長を果たしている。ちなみに、売り上げの2割がウォシュレットによるものだという。

 2002年に中国進出を果たした「シャワートイレ」のINAXも長く知名度の低さに苦しんでいたが、2010年の上海万博でついにブレイクを果たした。日本産業館のなかに金色に輝くトイレを設置、心地よい音楽が流れる応接室のようなトイレ空間を演出し、「世界一きれいなトイレ」をうたったことが中国人から注目を集めたのである。金のトイレなんていかにも成金的で悪趣味だなどと思わないで欲しい。中華街の装飾を見て分かるように、中国人は「金」が大好きなのである。

 つまり、今のウォシュレットなどの爆買は昨日今日に偶発的に起こった一過性のブームのようなものではなく、おおよそ四半世紀にも及ぶ地道なブランド戦略がここにきてようやく花開いてきたということなのだ。

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