宅配は大手だけではない! 自転車を駆使して稼ぐエコ配進化する物流ビジネス最前線(1/2 ページ)

» 2015年04月17日 11時00分 公開
[伏見学ITmedia]

 緑色のシャツに身を包んだ青年が、自転車に連結したリヤカーに緑色の大きな箱を乗せて都内を疾走する。そんな光景を最近よく見掛けないだろうか。雨が降ろうと、雪が降ろうと、風が吹き荒れようと、とにかく自転車をこいで荷物を運ぶ。これは2007年に事業がスタートした「エコ配」という宅配便サービスだ。

自転車を使うことで配送の低価格化を実現しているエコ配 自転車を使うことで配送の低価格化を実現しているエコ配

 運営会社も同じ名称のエコ配。これまで日本の宅配便サービスはヤマト運輸や佐川急便といった大手企業の寡占状態だったが、エコ配はその隙間をつくニッチ戦略で少しずつ事業を伸ばしている、いわば物流業界のベンチャー企業である。

 現在の売上高は約35億円で、荷物の年間取り扱い個数は900万個を超えた。ヤマト運輸の約16億個、佐川急便の約12億個と比べるとその差は歴然だが、そもそも主戦場が違うとエコ配の片地格人社長はどこ吹く風。エコ配は主にB2B(Business to Business)向けで、顧客数は1年間で10万社に達する。そのほぼすべてが中小企業だという。片地氏は「まだまだ未開拓の企業が圧倒的に多い。5年以内に荷物量を2〜3倍にしたい」と鼻息荒い。

 また、配達は約10社の協力パートナーとともに全国をカバーしているが、集荷は基本的に営業所を構える東京、大阪、名古屋の都市部と、京都および神戸の一部エリアだけで行っているのも特徴だという。

コストダウンの徹底

 エコ配の強みは安い配送料だ。例えば、東京〜大阪間で3辺合計80センチ以内の荷物を送る場合の料金は390円。これは大手宅配会社より6割以上も安い。

 なぜこんな低価格でサービス提供できるのか。その最大の理由は自転車で配達するからである。バイクや軽自動車を使うこともあるが、それは全体の3分の1程度。「軽自動車を自転車に変えると車両コストは約10分の1になる。さらにガソリンも不要。自転車を増やせば増やすほどコストダウンを図れる」と片地氏は強調する。

荷物の年間取り扱い個数(出典:エコ配) 荷物の年間取り扱い個数(出典:エコ配)

 また、エコ配は小型荷物に絞り、冷蔵や冷凍は取り扱わない。そのため営業所には広い収容スペースも冷蔵庫も不要だ。これも低コスト化につながっている。片地氏は「エコ配の営業所は最小限のスペースさえあればいい。大型トラックではなく自転車を使うので路地裏の立地でも問題ない。建物などの保証金を含めても数百万円ほどで拠点を作れる」と説明する。

 集荷を東京、大阪、名古屋に限定していることもコストメリットがあるという。全国で集荷対応する宅配会社の場合、1つの営業所に1日複数回も荷物が届く。しかも各地から別々にやって来るため、そのたびに配達網を作らなければならず、1つのエリアコースに複数人必要となる。

 エコ配の場合、東京、大阪、名古屋から朝一番で荷物が届き、それを配達すれば午前中の作業は終わりだ。基本的に午後は集荷作業に当たる。1つのエリアコースに担当は1人なのでコスト効率が良く、最小限の人員で業務を回すことができるという。

 「宅配会社の事業コストで最も大きいのが人件費で、次に店舗費用、車両費用となる。この3つを徹底的に削減したのが我々のビジネスモデルの根幹になっている。今後はコストの約半分を占める人件費をさらに効率化していく」(片地氏)

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