アシアナ航空の謝罪会見が遅かった背景に「3つの要素」スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2015年04月21日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「なにか後ろめたい」ことがある時

 この時の積極的な情報発信を踏まえると、今回の2日間の沈黙という対応はあまりにも違和感を覚える。お亡くなりになっている方がいるいないという違いはあるが、着陸ミスで機体が破損し、乗客が緊急脱出という流れで言えば丸かぶりのシチュエーションだからだ。

 実際にどういう力学が働いたのかは分からないが、一般的にはこういう深刻な事故が起きた際に広報がズルズル遅れるというのはいくつかの「要素」を抱えていると言われる。ひとつ目は「なにか後ろめたい」ことがある時だ。記者に突かれると痛いところがあるので、十分に対応を協議しないとえらいことになるからだ。

 こう考えて今回の事故を見ると、そうと思える要素もある。事故発生直後から航空評論家が「ダックダウン」なんて業界用語を用いて、パイロットの操縦ミスの可能性を指摘したのはご存じのとおりだ。また、サンフランシスコでは英雄的な活躍をみせたアシアナのCAさんが煙で充満する機内で、ドアが開かずにパニくっていたなんて証言をする乗客もいた。さらに極めつけは、このような報道もなされていることだ。

シューターは、乗客を速やかに避難させるため、多少のけがはやむを得ないとされる。女性も「命を優先させようと必死だった」と振り返るが、韓国人乗務員がパニックになり、乗客の大半が自分の判断で滑り降りていたと指摘した。(日本経済新聞 大阪 4月18日)

 機内ビデオで見るように、緊急脱出シューターには下りた先に補助者がつく。勢い良く滑り落ちてくるので危険なためだ。もしこの女性の証言が事実なら、避難誘導が果たして適切だったのかという問題が出てくる。こういうクリティカルなリスク情報を収集して精査をしているうちに、ズルズルと会見が後ろに倒れてしまったというのは大規模事故などでは珍しくない。

 また、広報対応を遅らせる要素としては「責任問題」ということもある。これまた一般的な話だが、事故の原因、責任などがかなりビミョーな場合はすぐさま謝ったりなんだりということは後で賠償などのペナルティで自分の首を絞めることになるので、しばらく「静観」という選択をすることがあるのだ。

航空機事故を受け、アシアナ航空はプレスリリースを発表した

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