そして広報を遅らせる最後の要素が「オトナの事情」である。頭を下げることで、他の事業などに大きなダメージを与えたり、企業価値を毀損する可能性がある。世の中からボコボコに叩かれるよりも、頭を下げないメリットがあるというわけだ。
実はサクッと来日して、県副知事に謝罪をして帰国をした金社長は、昨年末までアシアナと釜山商工会議所と共同で投資したLCC「エアプサン」の代表を務めていた。この社長人事からも分かるように、アシアナはLCCに力を入れている。エアプサンを釜山地域に拠点を置く地域航空会社とする一方で、新設LCCも予定しているという。
こういうLCC路線強化を進める繊細な時期に、操縦ミスだとか客室乗務員がパニくったという情報が流れる。それだけでも深刻なダメージなのに、もしも会見で金社長が日本の記者にフルボッコにされたら取り返しがつかない。
また、それは今後の「企業戦略」にも暗い陰を落とす。実はアシアナ航空が属するのは、韓国と日本を結ぶ海底トンネルの建設というダイナミックな観光活性化を主張していることで知られる朴三求(パク・サムグ)会長が率いる錦湖(クムホ)アシアナグループ。このグループの中核企業である錦湖産業の買収をめぐって、かなり騒々しくなっている、と昨年12月に韓国メディアが報じているのだ
実はグループは2006年に大宇建設、08年に大韓通運を相次いで買収し、飛ぶ鳥を落とす勢いで規模を拡大していたのだが、リーマンショックでつまずいて09年から構造調整に入っており、アシアナ航空の株を持つ錦湖産業などは債権団と自律協約を結んでいた。
もちろん、債権団から買い戻す優先権を持っているのは朴会長だが、2013年の韓国小売り大手の新世界やプライベート・エクイティ・ファンド(企業の株式に投資し、その後の売却を通じて利益を得る投資ファンドのこと)などが次々と買い手として名乗りを上げている。錦湖産業はアシアナ航空株を約30%保有する筆頭株主なので、ここを手中に収めるということは、アシアナとエアプサンの2つの航空会社が付いてくるというわけだ。
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