電気シェーバー市場で、日立だけが「ロータリー」にこだわり続ける理由スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2015年06月02日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

25年を経た今も揺らいでない“自信”

 それまで市場になかった「らせん状の内刃」は「第三の方式」と呼ばれ大きな注目を集めた。日経流通新聞(現・日経MJ)にもこのような記事が掲載されている。

 「らせん状の刃が優れていることはかなり以前からわかっており、他メーカーもこれに関する特許を取得している。しかし、商品化に成功したのはわが社が初めて」。同社の熱器照明最寄品本部照明最寄品部最寄品グループの佐藤文昭副参事はこう言って胸を張る。最大のセールスポイントは「切れ味です」ときっぱり。何度か断念しかけながらも、十年を費やして開発にこぎつけた自信にあふれている。(日本流通新聞1990年6月16日)

 この“自信”が25年を経た今も揺らいでないことは、岩倉課長の言葉からもうかがえるが、その思いをさらに強固にしているのは、単に「方式」にこだわっているのではなく、さらに新しいモノへと進化させているからだ。

 「深剃りにこだわっていくと、やはり刃先を鋭角にしていくしかないわけですが、ただ単純に鋭角にしても耐久性に問題がある。そこで着目したのが日本刀です。刃先の最鋭角が25度から30度ですが、“引き切り”をすることで刃こぼれを防いでいる。このような構造を応用したのが、2010年に開発した“ドラムレザー刃”です」

 それまでのらせん状の内刃ではなく、クロースウェーブ形状の内刃にしたことで、耐久性が増して最鋭角27度という鋭さを可能とした。さらに、編目になっている200枚の刃がヒゲに対して、2方向からの“引き切り”をより効率の良い深剃りを実現したのである。

 だが、このように深剃りを追求していく岩倉氏たちの前に、避けては通れない「永遠のライバル」ともいうべき存在が立ち塞がる。競合他社ではない。

 T字カミソリだ。

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