日本の観光における「理想と現実のギャップ」をたどっていくと問題の根幹にはこのような「ユーザー目線」の欠如があるのではないか。それを象徴するのがゴールデンウィークだ、とデービットさんは指摘する。
この「ゴールデンウィーク」という制度の恩恵を、日本の観光産業はあまりにも長く受けてきたことで、「大量の観光客をさばく」という供給者側視点の効率のよさばかりを追求するようになってしまったという側面は否めません。それこそが、日本企業の「おもてなし」というものが、自分たちが追い求める理想と乖離してしまった、最大の要因ではないかと思うのです。(124ページ)
これは非常に腹オチした。ゴールデンウィークほど「ユーザー目線」が欠如した制度はない。観光客は大渋滞を強いられるし、飛行機やホテルは「特別料金」をとられるなどデメリットは山ほどあるが、供給者側からするとよいことづくしだ。
まず、価格をつり上げられるのは言うまでもないが、なによりも限定した期間に客が集中するので、人員や食事の材料購入などの計画が立てやすいということがある。つまり、閑散期と繁忙期がクッキリと分かれているので、観光地の宿でも飲食店でも土産物屋も効率的に客をさばくことができるわけだ。
このように「供給者側の都合」が優先される国で、異なる文化や価値観をもつ「ユーザー」が居心地がよくないのは言うまもでない。だが、それは裏を返せば、「ユーザー目線」を取り入れさえすれば外国人観光客は増える、ということでもある。しかも、デービッドさんによると、日本の場合はそれが劇的に増える可能性があるのだ。
本書で紹介されているが、「観光大国」になれる国は自然、文化、気候、食事だという4つの条件があるが、日本はすべてこれを満たしている。つまり、「ユーザー目線」でしっかりとした観光資源の整備を行えば、日本は8400万人の外国人が訪れるフランスにも匹敵する観光大国になれるというのだ。
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