松林: 80年代は松田聖子さん、90年代は安室奈美恵さんに、人気が集中していましたが、90年代後半ころになると、Aさんは○○が好き、Bさんは○○が好き、Cさんは○○が好きといった感じで、みんなの好きが分散化する傾向が出てきました。お菓子の世界も同様に、それまではチョコであればポッキーとキットカットがあれば満足という人が多かったのですが、このころになるとさまざまな商品に目がいくようになりました。
そして、2000年以降になると、素材だけでなく、エッジの立った商品が増えてきました。例えば、2003年に「暴君ハバネロ」(東ハト)。各ジャンルにさまざまな商品が出てきたことで、消費者の間である動きが出てきました。それは「迷い」。
自分はどれを食べたらいいんだろうと。そうした消費者の不満が届いたのでしょうか、PB商品が増えてきました。多くの男性は食べ物に関して浮気をしないので、PB商品で“いつもの味”を楽しまれるようになりました。
土肥: 時代の影響を受け、お菓子もさまざまな商品が増えていった。しかし、消費者の間に「どれを選べばいんだろう」という迷いが生じ、その課題を解消するかのようなモノが登場した。それがPB商品。結果、新商品が生まれにくい環境になったわけですね。
松林: はい。
発売年 | メーカー名 | 商品名 |
---|---|---|
2000 | キャドバリージャパン | リカルデント |
2001 | ハウス食品 | さわやか吐息 |
2001 | ブルボン | チョトス |
2003 | 東ハト | 暴君ハバネロ |
2003 | 江崎グリコ | ポスカム |
2005 | 江崎グリコ | GABA |
土肥: お菓子のヒット商品が生まれにくい背景を探っていくと、音楽業界もちょっと似ているところがあるのかなあと思いました。かつては、松田聖子さんや安室奈美恵さんのような時代を代表する歌手の音楽を聴いていれば、多くの人は満足していました。実際、子どものころに流行った音楽って、大人になっても歌えますよね。例えば、40代半ばの女性であればピンクレディーの『UFO』は歌って踊れる。
一方、いまの子どもたちはどうなのでしょうか。私は○○が好き、オレは△△が好きといった感じで、好みの多様化しているので、大人になったときに一緒に歌える曲が少ないかもしれません。嵐とかAKB48の曲くらいかな。
ということは、いまの子どもたちが大人になったときに「昔、どんなお菓子を食べていた?」と聞かれても、出てくる商品名はバラバラ。なので「私もそれが好き」「オレもよく食べていた」といった会話が成立しにくいかもしれません。
松林: ひょっとしたら食べたことがないかもしれません。いまは「お菓子を食べてはいけません」という躾(しつけ)をされている親が増えてきているそうなので。
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