「S660」はホンダの問題を解決できない池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2015年07月06日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

日米に強く、欧州とアジアで弱いホンダ

 さて、こうした中でホンダはどういう戦略をとっているのだろうか。ホンダは会社案内の中で、2014年以降の方針として「暮らしに寄り添う小さなクルマを、続々と」として、メキシコ、インド、インドネシア工場の新設や拡充によって「世界的に需要が高まる小型車を、お客様のニーズに応えて開発し、お届けする」という計画を打ち出している。

ホンダはアジアの工場を増設するとともに、メキシコに新工場を建設した ホンダはアジアの工場を増設するとともに、メキシコに新工場を建設した

 どうしてそういう計画が策定されたのかを確認するために、2014年のホンダのアニュアルレポートから各エリアごとにホンダの販売台数とシェアを見てみる。

国名 ホンダの販売数 自動車販売総数 シェア率
日本 81.2台 569万台 14.27%
北米 175.7万 1560万台 11.26%
欧州 16.9万台 1230万台 1.37%
アジア 52.9万台 3071万台 1.72%

 日本でのシェア率14.7%は立派な数字だ。トヨタの同様の数字27.9%と比べると、企業規模やグローバル販売台数の差から見て日本マーケットでの健闘は見て取れるだろう。

 さらに特徴的なのは北米での強さだ。2013年には北米生産車の他国への輸出が、日本から北米に輸出される台数を超えた。ホンダは1982年に北米に初の工場を建設して以来、生産拠点を次々と拡充し、深く北米に根を下ろした。1990年代までは、世界中のメーカーが北米を制することに血道を上げていた時代で、その時代のホンダははっきりと勝ち組だった。

ホンダの原点とも言える初代スーパーカブ。良いものを作った結果爆発的に売れた。スーパーカブは世界を変えたプロダクツだが、その成功体験が通用する時代は過去のものである ホンダの原点とも言える初代スーパーカブ。良いものを作った結果爆発的に売れた。スーパーカブは世界を変えたプロダクツだが、その成功体験が通用する時代は過去のものである

 日米では健闘中のホンダだが、欧州とアジアでのシェア率は低すぎる。特にF1で名を馳せながら欧州マーケットで1.37%しかとれていないのが非常に問題だ。上述のように、本来欧州では日本マーケットで売れるクルマでそのまま戦えるはずなのだ。

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