インタビュー
社会貢献と収益性のはざまで――新日鉄エンジニアリング・浅井信司氏(後編):嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(3/3 ページ)
日本企業の技術力を生かし、海外で橋を架ける――平成不況を横目に成長してきた海外橋りょう部門は今、大きな転換点を迎えている。ここではその課題について整理するとともに、浅井氏の業績を、戦略視点的に読み解いていく。
虫瞰図的視点から見るとどうだろうか? 浅井氏は、海外現地・国内のいずれにおいても、同業種・異業種を問わず人的ネットワークが豊富であり、常に多数の情報ルートを確保している。それゆえに、いかなる非連続・現状否定型の環境変化に直面しても、現場の一次情報を逸早くキャッチし、即時対応できたものと推察される。
浅井氏のこうした強みは、1997年のアジア通貨危機に際して如何なく発揮された。いわば虫瞰図的視点から、確度の高い現場情報を迅速に把握し、それを今度は、鳥瞰図的視点に立って冷静に評価することを通じて、1998年の特別円借款制度への道を切り開くことに成功したといえる。
ここで大事なことは、鳥瞰図的視点は、虫瞰図的視点の徹底した駆使があってこそ生きるということである。それのない鳥瞰図的視点は、大企業の経営企画室に時として見られるような、現場の実情にそぐわない自己満足的な机上の空論になりかねない。
逆に、鳥瞰図的視点の欠ける虫瞰図的視点は、大局的視点に欠けるがゆえに情報の収集・把握自体がすでに適切さを欠き、結果的にその現場だけの部分最適志向にならざるを得ない。「木を見て森を見ず」タイプと呼んでよい。
そういう意味で、浅井氏と彼の率いるチームは、両者の巧みな使い分けを通じて、全体最適を実現していったものといえるだろう。
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