環境先進国ドイツのエネルギー政策を読む――2020年に向けた10のビジョンとは(前編):松田雅央の時事日想(2/2 ページ)
資源に乏しいが、エネルギー源の国内確保を目標としており、かつ、脱原発のプロセスを進めているドイツ。ドイツ環境省は先日、エネルギー政策についてのロードマップを発表。2020年を見据えた10のビジョンから、ドイツ近未来のエネルギー戦略を浮き彫りにする。
ビジョン4:脱原発へカウントダウン
2000年、ドイツ政府は原発からの完全な撤退を決意した。そうは言っても、一次エネルギー換算で11.5%、電力換算で20%ほどを原発に頼っている現状を考えると、一気に止められるわけではない。運用年数の過ぎた原発から順次停止して、2022年頃に脱原発を完了するプロセスが現在進行中であり、すでに3カ所の原発が運用を終えている。代替エネルギー確保の目途が付かない場合には運用年数の延長という可能性もあるが、遅くとも2030年までには脱原発が完了する予定だ。
しかし脱原発の国際的な風向きは芳しくない。「原発事故の危険性」「いまだ解決の見込みが立たない放射性廃棄物処理問題」「核拡散のリスク」「テロの脅威」といった点を考慮し、世論の後押しで脱原発に踏み切ったドイツ。しかし、温暖化ガス排出削減に有力という理由から、皮肉にも世界的には原発復活の兆しがうかがえる。
究極的にはほかの国がどう考えようと関係ないのだが、産業界にあった「反脱原発」の意見を抑えた経緯もあり、追随する国がないのはドイツ政府にとって何かと都合が悪い。実際、この不況下でも原発建設を請け負うフランス企業は好景気に沸いている。
ただし、ドイツの脱原発プロセスが停止したり原発推進に方向転換することは、予見可能な未来においては有り得ない。まず世論がそれを許さないし、原発建設や運営管理を担う人材が育たなくなった今、やりたくてもできない状況になっている。
- 脱原発プロセスは、多少減速することがあっても後戻りはない
- 2030年には脱原発完了
ビジョン5:電力の40%は石炭
ドイツは石炭や褐炭を産出し、今後ともエネルギー供給の大きな部分を担う。ドイツの石炭・褐炭採掘量は2.1億トン(2002年)で世界のおよそ4.5%を占め、特に褐炭の割合が大きい(石炭14%、褐炭86%)。ただし、褐炭は石炭と比べて燃料としてのエネルギー効率が低く、二酸化炭素の発生量も多い。
- 発電効率の向上と熱利用の促進が課題で、技術革新と設備更新により二酸化炭素排出量の大幅な削減を目指す
- 2020年の電力供給は40%が高効率の石炭火力発電
後編ではビジョン6以降を解説する。
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