アキバメイドが語る! メイド喫茶産業の舞台裏(後編):現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(4/4 ページ)
秋葉原のメイド喫茶で働く、女子大生メイドのあいりちゃん。前編ではメイド喫茶の種類や歴史、求められるホスピタリティなどについて話してもらったが、後編ではお金の話を中心に裏話を語ってもらった。
結局、メイド喫茶とは何なのか?
色々書いてきたが、最後に筆者の私見を書いておこう。
メイド喫茶とは、結局は単なる「カワイイ女の子がメイド服を着て接客をしている喫茶店」である。緩やかなコンセプトリーダーはいるが、マーケットリーダーがいない参入障壁の低い完全競争市場の中に100店舗以上がひしめいているので、「常連に対する差別化を頑張ってみたらこんな風になりました!」というようなマーケットでしかないだろう。
目立ったマーケットリーダーが存在せず、老舗でもバタバタ潰れているのは、ある種どの店も根本的には同質で、経営がそこまでうまくないという証拠だろう。学べるものがあったのか、筆者にはイマイチよく分からない。
無論、経営学的なポジショニング分析でも行えば面白いのかもしれないが、要素が多い割に各要素のインパクトの違いが全然分からないので(「猫耳ナース服」と「ミニスカ巫女さん」との間にどんなターゲティングの差があるのか、筆者には毛頭分からない)、こじつけにしかならないだろう。現在のように、各メイドのキャラに常連確保を依存しているような状況の中では、往々にしてたまたまカワイイ女の子が多かったから、というのがKBF(Key Buying Factor、購買要因)になりえる。
非常にうがった見方をすれば、「サブカル的なものに商業資本はなじまず、逆に言えばなんだかんだ言いつつ、どんな巨大資本もマーケットリーダーにはなりえないからこそ、サブカルはサブカルであり続けるんだろうな」という妙な安心感だけは残った。
メイドなどのサブカルを大衆文化にすることを画策する動き(ここ最近は落ち着いたようだが)は、そううまく行かないのではと筆者は考えている。
例えば、あいりちゃんも知り合いだという女装メイド喫茶「雲雀亭」の仕掛け人※のように、身銭を切ってサブカルをよりコアな方向に持って行くものは歓迎されている面もあるが、森永卓郎先生のようにメイド検定を作ってみたりと、メイドを画一的な大衆サービスにしようとする方向性は、現況としても展望としてもイマイチうまく行く気がしない(メイド検定を主催する日本メイド協会の協賛企業を見る限り、大して組織率も高くなさそうである)。
サブカルとしてのメイド喫茶を望む筆者ではあるが、取材が終わった後、あいりちゃんに「これからお給仕なんだけど、一緒に行く?」と言われたが、「平日は常連客が9割」「一見さんに対してメイドはほの暗い感情を持っている」という取材内容におののき、すぐに一緒に行く友人も見つからなかったため、断念したというエピローグもある。
だから、非日常空間――“2.5次元”の演出もよろしいが、もっと敷居の低い場所になってくれてもいいかな……と、旦那様へのお給仕へと向かうあいりちゃんの後ろ姿を見ながら、ボーッとそんなことを思った次第である。
そうそう、先週のラストで触れた問題に答えるのを忘れていた。「なぜ、アキバの駅前でビラを配っているメイドは、あまりカワイくないのか?」
答えをあいりちゃんに教えてもらって、記事の結びとしたい。
「今のメイド喫茶はほとんど常連で回ってるから、一見の観光客を呼び込んでもあんまり意味がない。ブームが終わり、どのお店も良くはない売り上げの中でメイド数人のギリギリ(の人件費)で回しているんだから、ビラなんて配っているのは常連が寄り付かない、メイドのレベルが低くて暇でつぶれかけのお店だからに決まっているじゃない? はっきり言ってアキバのイメージ低下だから、アレはやめてほしいよね」
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