アニメを海外に売り込む方法――映画プロデューサーの仕事とは(後編)(3/3 ページ)
映画やテレビドラマなどを制作する上で大きな役割を果たすにも関わらず、監督に比べて地味な存在と思われがちなプロデューサー。東京ディストリビューション・オブ・コンテンツセミナーで行われたGONZOの内田康史氏の講義では、どうアニメを海外に売り込むかということについても語られた。
海外展開をする上で大切なこと
海外で仕事をする場合、英語の通訳は必ず付けた方がいいと思います。僕も海外は長いので自分でも英語はある程度しゃべれると思っていますが、ビジネス用語は怖いので、自分の不備にならないよう必ず通訳を付けるようにしています。商習慣も欧州、米国、アジアで全然違います。もの作りでもそうで、例えば宗教観の強い映像表現はご法度です。『天使と悪魔』のような作品もありますが、基本的にはそこは触れない方がいいようです。
また、実写映画をやる場合には各国の俳優を入れてやるかという問題がありますね。ギャガが配給している映画『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』では、木村拓哉さんのほかに、イ・ビョンホンさん、ジョシュ・ハートネットさんというように、その地域で有名なキャストを付けていますが、それもビジネス面では重要なポイントです。また『007』シリーズのように、いろんな地域で撮影して、撮影した地域の観客に来てもらうというやり方もあります。それで映画がつまらなくなるケースもあるので、そこはトレードオフなのですが、プロデューサーはこういうこともある程度考えながらやっていくことが必要ではないかとも思います。
ただ、マーケティングの要素を取り入れすぎたものを作ると、その人の個性はまったく現れなくなります。今僕が言ったことと180度違うのですが、自分が面白いと信じていることを100%表現するものを提供しようというやり方もあります。どっちが正しいか、どっちが間違えているかということは実績で分かることなので結果論でしかないのですが、同じプロデューサーでも作品によっては、そういうバランスを考えながらやっていく必要はあるのではないかと思います。
GONZOの『アフロサムライ』という作品を例にお話します。『アフロサムライ』は共同制作であり、共同出資でもあり、リメイクの権利もありと、複合的に展開している作品です。日本では渋谷のシネマライズで劇場公開しましたが、基本的には米国で放映、出版されていて、ゲームも日本ではまだ発売していませんが米国ではヒットしています。今、実写でのリメイクを準備していて、共同制作権を持っているサミュエル・L・ジャクソンというスターウォーズにも出た俳優と一緒にキャスティングを決めてスタートしています。
『アフロサムライ』 セカンドシーズン−AFRO SAMURAI:RESURRECTION
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『アフロサムライ』の時にはパイロットと企画書を持って、ハリウッドのほとんどのメジャースタジオを回ったんです。「面白い企画だね」と言ってもらえるし、監督もやりたいと言ってくるのですが、会社で稟議として上げようとすると、役員は「コミック?」「アニメ?」と全然分かっていないんです。「アニメは海外にも認知されている」と日本のメディアは騒ぎますが、ハリウッドが実写でやっているビジネスに比べると、ほんの小さなものでしかないのです。
「これはもう商売にならないな」と思った時にサミュエル・L・ジャクソンが来て、「俺にやらせろ」と言った途端、「サムが入ったならやるよ」とハリウッドの会社が目の色を変えてきたのです。当たり前のことでよくある言い方なのですが「フックをどうやって付けるか」が一番ポイントだと思うので、サムがいなかったらこの事業は成り立たなかったと思います。
結局、「プロデューサーは人脈ビジネスだ」と言う人もいます。ただ、知っているだけでは全然話にならなくて、その人に信頼してもらえていて「一緒にやろうよ」と本当に言ってもらって、「本当にやろうよ」とお願いした時に、「じゃあやろう」と言ってくれる人がいることが重要なポイントだと思っています。「じゃあどうやって信頼してもらえるか」というと、これは相手にお金で返すしかないんです。お金で返したら「次もやろう」とほとんどの人が言ってくれるので、ビジネスをやっている以上、自分と付き合うことが成功につながると先方に思ってもらうことが大事なのです。その成功を僕が実績として持っているか、あるいはこの先持てる可能性があるかとみられるだけでしょうね。
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