ブランドの魅力とは「これまでの歴史」×「これからの未来観」:デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。(3/3 ページ)
ブランディングは、今や中小企業でも無視できない。今回はクルマ、その中でも少し派手なクルマである、フェラーリとポルシェをネタにしつつブランド価値について考えてみよう。
「最新のポルシェが最良のポルシェである」の意味
他方、ポルシェから感じるのは、ドライビングの楽しみを提供する先にレースもあるという世界観。自動車雑誌が「最新のポルシェが最良のポルシェである」という言い回しを昔から使うように、ポルシェにも性能志向な面もありますが、どちらかというとクルマは媒体でありアイコンである感じです。
ポルシェのラインアップ上で、トップレンジのスポーツカーと位置付けている911シリーズの中にあるGT3RSのように、レーシングカーにもなるロードカーを商品として持つ必要があると考えているのではないでしょうか。
そしてポルシェ自身が行うレース活動においても、顧客が購入できる911GT3RSの延長線上にあるハイブリッドレーシングカー「GT3R Hybrid」を走らせるなどして、少し先の未来への方向性を見せていくことにも熱心です。「環境問題など世の中が求めることへ対応しつつも、日常からサーキットでのレースまで、ドライビングを楽しむ人たちを今後も支援し続けますよ」と。
事業の稼ぎ頭が、いまやスポーツカーである911ではなく、SUVや4ドアセダンのモデルに移っている現在でも、彼らのブランドの見せ方という面での行動からは「スポーツカー専業の量産メーカー」であることを重視していることが感じられます。
2010年のジュネーブモーターショーで発表したハイブリッドのスポーツカー「918スパイダー」を、ショーだけのコンセプトカーに留めず生産へゴーサインを出したのも、販売したという実績を重視しているからなのでしょう。2011年のデトロイトモーターショーでは、進化版ともいえる「918RSR」を発表しました。
ブランドが目指す未来が期待感へと変わる
フェラーリとポルシェから感じられるブランド戦略の違い、それぞれ対象顧客層も異なりますから、どちらが正しいというものでもないし、458イタリアから感じた「行き詰まり感」も私だけが感じているものかもしれません。
しかしブランドは顧客側のアタマの中に形成されるもの、と考えると「過去から現在」と「現在から未来」と時間軸に沿ったメッセージを感じる点で、現時点ではポルシェの方が強いなぁと思った次第です。そのブランドが向かおうとしている未来が感じられた方が、現在と未来の顧客の期待感につながりますしね。
どちらもブランド力は強力ですから、この先は分かりません。それぞれの次の手が楽しみでもあります。どちらも公式WebサイトやFacebookでの、ユーザーやファンへの情報提供やコミュニケーションを積極化させていることも注目しています。
ことフェラーリの方は、ひと昔前のブランドイメージからすると、違和感がある程のフレンドリーさですから、これから何が変わって何が変わらないのか、しばしその行方を注意していきたいと思っています。
※この記事は、誠ブログ「ブランドの魅力づくりには「これまでの歴史」と「これからの未来観」が欲しい」を編集、転載しています。
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