旅客機の整備の話。“空の安全”はどう守られている?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
世界の空を毎日のように飛び続ける旅客機は、どんなふうに整備されているのだろうか? 今回は、磨き上げた専門の技術や知識を駆使して“空の安全”を支えるスペシャリストたちの現場を覗いてみよう。
整備工場の見学会に参加しよう
飛行機ファンやエアラインファンの人たちからは、よく「整備ハンガーを見学することはできませんか?」といった質問が届く。航空の世界に興味をもち、将来は空港で働く仕事に就きたいと願う若い人も増えているのだろう。そんな人たちにぜひ活用してほしいのが、エアラインが主催する航空教室だ。
ANAやJALは、羽田空港の機体整備工場で一般の人たちを対象にした見学会を実施している(参加は無料)。以下は、前に取材したJALの見学会での様子である──。
東京モノレールの新整備場駅から歩いて2分。集合場所であるJALの「M1ビル」の正面玄関前に到着すると、参加者全員にネックストラップのついた「見学者ID」が配布された。3階の見学者ホールへ移動する途中でJALのロゴマークの入った作業用つなぎ服を着た整備士たちとすれ違うと、旅客機の整備現場に足を踏み入れたことを否応なく実感する。見学者は最初に見学者ホールでビデオを見ながら簡単な説明を受け、その後はホールに展示されたジェットエンジンや航空機、格納庫などの模型を見学。ここでパイロットやキャビンアテンダントの制服・制帽を着用しての記念撮影もできる。
間近で見る離着陸も迫力満点
そして、いよいよ整備ハンガーへ。ハンガー全体を一望できる見学用デッキで、担当者から旅客機整備の概要が説明される。ドック入りしている旅客機が意外に小さく見えるのは、それだけハンガーが巨大であることの裏返しだろう。エプロンに面したスライド扉は開かれ、その先から離発着する旅客機のエンジン音が響いてきた。
小学生の男の子の引率で来ていた父親は「想像以上に大きな施設であることにビックリしました。いまから実際にハンガーに降りられるそうですが、飛行機を目の前で観察できるなどめったにない機会ですので、子供と2人でワクワクしています」と、むしろ自分のほうが興奮した様子で話していた。
ハンガーに降り、真下から機体や主翼を見上げる参加者たち。どの目も、そのスケールの大きさに釘付けになっているようだ。機体の構造に関しての説明を聞きながら、開かれたスライド扉の向うばかりをチラチラと気にしている女性がいた。扉の先は羽田空港で、目の前に広がる滑走路から国内の各都市に向けて旅客機が次々に飛び立っていく。こんな光景は、普段なかなか見ることはできない。女性の視線に気づいた担当者が「せっかく扉が開いていますので、離着陸の様子をしばらく見学しましょう」と呼びかけると、見学者の間にどよめきと歓声が上がった。
整備工場の見学はANAでも実施している。JAL、ANAともに個人でも団体でも参加OK。申込みは、JALは電話予約の上、所定の用紙に記入してFAXまたは郵送で。ANAはWebサイトからの予約・申込みが可能だ。整備工場までの交通案内や見学の概要、見学可能日、注意事項などもWebサイトに詳しく掲載されているので、参考にしてほしい。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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