東京ソラマチ――“新しい下町”には未来へのとんがりがあった:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
5月22日にオープンする東京スカイツリー。同時にオープンする東京ソラマチは「ツリーのふもとの商業施設でしょ」なんてあなどれなかった。
Scottの本格自転車で下町を走ろう
1階に降りよう。筆者のお目当ては「BOOSTER CAFE RENT A BICYCLE by SCOTT」。カフェとレンタル自転車の融合ショップで、Scottのロードバイクとクロスバイクがある。
発射台という意味のブースター カフェには、オリジナルのパニーニ(パンで具材を挟んだ軽食)やコーヒー、ソフトドリンクがそろう。自転車好きにたまらないのは高級自転車Scottのレンタルだ(1時間1500円から8時間3000円まで)。
「近く商店街巡りならクロスバイクを、遠くの川沿いのコースを走るならロードバイクをお勧めします」
こう語るのはコンシェルジュの西村益美さん。初めての自転車選びのアドバイスや周辺エリアのサイクリストスポットを教えてくれる。彼女は自転車レースやトライアスロンまで参加するスポーツビューティ。本格自転車(ロードは車重7キロ)にまたがり、下町散策もステキじゃないですか。
「私たちはソラマチと墨田区の地域がひとつになる楽しさをつくりたいんです」(西村さん)
古き街並みを最新の自転車で巡る。これもオツである。
古きと新しきを融合するブースターに
冒頭の疑問に戻ろう。東京ソラマチをひととおり巡って、Kさんの喜び爆発の意味が分かる。彼はこんな話もしていた。
「東京タワーのときを思い出しちゃうよね。あのときは行列がものすごくて、展望台まで階段で上ったよな」
か、階段? そんなぁ……。1958年、高度成長期への入口にあった日本。展望台の上の鋼材は、米軍から払い下げの戦車90両を溶かしたという。東京タワーの売店「タワービル」の目玉は蝋人形館だった。お土産はせいぜいメダルやスタンプ。2つのタワーを比べると、この半世紀の凄まじい変化が再認識できる。
日本の商業開発は「破壊」ばかりが目立った。街並みを壊し、道路をつくり、地域商業を追いやり、居住者を入れ替えた。今、墨田区という江戸の香り、戦後の風景が残る下町に、最先端の技術で鉄塔が立った。大企業の商業と中小店舗をショッピングモールに同居させた。ここから自転車、循環バス、歩きで地域のお店、路地、川巡り、地元との交流が楽しめる。あの時代を知るシニアが「もう一度」という思いが分かる。
東京スカイツリーは日本のストックを生かし、新しいパワーを注ぎ込む。古きと新しきを融合するきっかけになってほしい。満ち足りて足踏みしている私たちに、もういちどブースターを。
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