売れすぎて休業した100円ショップに見る「売れるヒント」:カイモノマーケティング(3/3 ページ)
今日の買い物客は、消費増税への不安や経済の不安定さなどから節約志向が上向いています。いいモノをより安く、そして楽しく買って、満足したい。そんな買い物客のワガママな感情を満たすには?
ハイな気分で買わせる「楽しさ」の演出
「来店」というハードルを越えた後は、店内での「楽しさ」で買いたい気分をつくります。ショッパーは、店内で論理的思考に陥ると買う気が半減してしまいます。
スーパーの入口付近に果実や花が置いてあるのは、カラフルで華やかな印象を与えて気分を盛り上げるためです。赤い色はよく気持ちが高揚すると言いますよね。感覚や感情をつかさどる右脳に訴えることで、買う気分を高めているわけです。
筆者が最近見た「店内の楽しさ」演出に、カールおじさんが店内を練り歩き、お客さんと触れ合うということがありました。店頭に着ぐるみが立っていて抽選会をするというのはありますが、店内をうろうろしているのは初めてみました。買い物している人の背後にひょっこり現れて、びっくりさせていましたが……。ある意味、非日常の体験であり、楽しい雰囲気づくりにもつながっています。
もう1つ事例を紹介します。バレンタインの時期に某スーパーで行われていたデコレーションしたポッキー「デコポッキー」づくりの体験教室です。こういうちょっとしたイベントは楽しい雰囲気づくりだけでなく、子どもにとって楽しかった記憶となり、「また、あそこの店に行きたい!」というリピート要因にもつながります。
このように、安さの演出は来店のハードルを解消し、楽しさの演出は購買のハードルを解消し、節約志向と納得志向を併せ持つショッパーに買う言い訳を与え、サイフのひもを緩ませることにつながるのかもしれません。
いいモノをより安く、そして楽しく買って、満足したい。そんなショッパーのワガママな感情を満たすことができれば、タイガーのように「売れて売れて仕方ない」という状況をつくりだせるでしょう。
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