なぜ日本人は否定形で話すのか?:日本人が気づいていないヘンな日本語(2/2 ページ)
日本の人は探し物をするとき「なかったですか?」と聞く。そこにあることを期待しているのに、なぜ「なかったですか?」と否定的な言い方をするのだろうか。第3回は、日本語の否定形について勉強していこう。
「相席」は日本独自の習慣?
セイン:うーん、かなりおもしろくなってきましたね。この問題はもっと追いかけてみたいと思います。
ところで、空いている席を探すことで思い出したんですが、おそば屋さんなどでは空いている席が少ないと「相席お願いします」と言われて、見知らぬ人と向かい合わせになったり隣り合ったりしますね。ぼくは日本に来たころ「相席」という言葉が分からなくて、困ったことがありました。
「相席お願いします」と店員さんに声をかけられたのですが、意味がわからずボーッとしていると、向かいに知らない女性が「失礼します」と座るではありませんか。アメリカにはそういう習慣はないので驚きました。
長尾:そういえば、おそば屋さんなどでは当たり前のように店員さんが相席をお願いしてきますね。お客さんの側で「ここ、空いてますか」と聞くまでもないので便利ですけど。
本当は「踏まれたり蹴られたり」が正しい?
セイン:「表現が反対じゃないの?」と思った日本語はほかにもあります。英語の「Nothing’s gone right.」に相当する「踏んだり蹴ったり」という言葉、「泣きっ面に蜂」と同じで重ねてひどい目にあうことなんですよね? それなら「踏んだり蹴ったり」ではなくて「踏まれたり蹴られたり」が正しいんじゃないですか?
日本の友人でおとなしそうな性格なのに「踏んだり蹴ったりだったよ」と言っているので、誰かをめちゃくちゃにやっつけた話かと思ってすごく驚いたことがあるんですが、あとで誤解と分かって笑われました。
長尾:もともとは加害者側からの言い方で「踏んだり蹴ったりの目に遭わせてやる」だったものが、被害者側の言い方である「踏んだり蹴ったりの目に遭わされた」となり、それが省略されて「踏んだり蹴ったり」となったのではないかといわれています。
よく似た表現で「殴る蹴るの目に遭わせる」という言葉がありますが、こちらは「殴る蹴るの暴行」といった使い方はあるものの「まったく、殴る蹴るだよ」のような言い方はしません。
セイン:なるほど、受け身の部分が省略されてしまったんですね。
(つづく)
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