コラム
今の50歳代が、不幸な高齢者になるかもしれない理由(2/2 ページ)
「老いの工学研究所」の研究員も務める筆者。5人の高齢者を招いた座談会で最も印象に残ったのは、ある80歳代前半の女性が語った内容だった。
ぜいたくを経験してきた50歳代はどうだ?
であれば、現在の50歳代やその下の世代が高齢者になっていくとき、どのように感じるのだろう。高度成長期に子供時代を過ごし、大学時代や社会に出たころはバブル期で、質素倹約など考えたこともない、ぜいたくを経験してきた世代である。生活レベルを落とすのは難しいというが、つつましやかに生きる術もマインドも持っていない世代が高齢化していくと、「不幸だ」と感じる高齢者が恐ろしく増える可能性があるのではないか。
高齢化社会の問題は多様だが、いつまでも生き生きと元気に働き、社会に関わり、貢献する高齢者を増やすことが、それら諸問題の解決において大切なのは言うまでもない。また、「健康とは、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態である」という世界保健機関(WHO)の定義に従えば、健康寿命を伸ばすという目標は、体を鍛えたりケアしたりするだけでは達成できず、高齢になっってから、精神的、社会的に良好な状態をいかに保つかも大切である。
その点で、50歳代がどのような高齢者になっていくのかは重要だ。若いころの価値観を変えられないままに不幸をかこちながら生きていく老人になるのか、それとも今の高齢者とは異なる幸福を見出していくのか。それは50歳代の人たち自身の課題でもあるが、次の時代を見据えて政策面や企業、地域も一体になって取り組まねばならない課題でもある。老後に備えたお金の話や、アンチエイジングにばかり注目している場合ではない。(川口雅裕)
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