ソーシャルメディアのビッグデータ活用は優先度を低くすべき:INSIGHT NOW!
ソーシャルメディアのマーケティング施策への活用において2つの視点があります。顧客との絆を築くことと、つぶやき情報を生かすことです。
著者プロフィール:渡部弘毅(わたなべ・ひろき)
経営コンサルティングのISラボ代表。日本ユニバック(現日本ユニシス)、日本アイ・ビー・エムなどを経て2012年5月、ISラボ設立。経営戦略、経営企画およびCRM領域にてコンサルティング活動中。ワクコンサルティングのパートナーコンサルタントとしても活動する。
ソーシャルメディアの企業マーケティング施策への活用において2つの視点があります。
1. 目の前の顧客と絆を築くことに注力する(Operational View)
100万人に対する幅広いアプローチより、100人に対する信頼ある正直なコミュニケーションが重要となってきます。100人と絆を築いた後ろにはソーシャルメディアを利用した100万人へのクチコミ効果が期待できるからです。そのためには、今までの100万人に対する「売らんかな」精神の「耳障りのよい」メッセージではなく、企業の姿勢や正直さが重要となってきます。
2. ソーシャルメディアのつぶやき情報を生かす(Analytical View)
ソーシャルメディアで日々投稿されているつぶやきは、まさに生活者のリアルな活動や感情の記録です。その膨大な情報を分析することにより、商品戦略等に活用できます。最近のITのビッグトレンドである「ビッグデータ」はここの領域を狙っています。
どちらが重要という判断はなかなか困難で、車の両輪ですが、私はOperational Viewの方が重要であり、今までのマーケティングのパラダイムシフトを与えるぐらいのインパクトがあると考えています。
過去、顧客志向という言葉が叫ばれつづけましたが、マーケティングはあいかわらず企業からのメッセージ発信が主体でした。ソーシャルメディアの浸透により、生活者主導の市場形成となり、正直に生活者と対話した企業が生き残っていく世界に変化していくように思えます。これぞパラダイムシフトです。
そうなるとAnalytical Viewの推進は意味がなくなります。「俺たちのつぶやきを勝手に分析して俺たちを洗脳する施策を出しているような企業なんか信用しないぜ! 正直に対話をしてこい」という生活者の声が聞こえてきそうです。
企業のソーシャルメディア活用は、販促姿勢のAnalytical Viewのプロモーションツールとして活用することよりも、正直に生活者との対話をするためのOperational Viewでの活用を優先するべきです。(渡部弘毅)
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