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日本人所有の零戦が日本に「帰還」できない理由:伊吹太歩の世界の歩き方(5/5 ページ)
現存する飛行可能な零戦を日本の財産として帰国させる動きがある。しかもそれは日本人が所有しているというのだ。だが、なかなか前進しないのはなぜなのか?
零戦、一時帰国ノ可能性アリ
ただ日本の場合は、戦時の「遺産」であることで問題になる可能性もある。日本を象徴する零戦が、「諸外国」を刺激するかもしれないからだ。安倍晋三首相が就任し、中国や韓国などから日本社会の右傾化が指摘される現在、戦時の象徴的な戦闘機を帰国させることには賛否があるだろう。だが純粋に日本人の作り上げた当時斬新だった飛行機として、日本人がその偉業を讃えることは何ら悪いことではない。
そんな課題もある中での「里帰りプロジェクト」だが、実はごく最近になって、里帰りに向けた風向きは変わりつつある。2013年10〜12月に、その零戦が一時帰国する可能性が出てきたのだ。東京にある水産航空の協力や、資金面での協力者にある程度、目処が付いたからだ。
日本を代表し、歴史的にも価値のある零戦の帰国は、日本政府が率先して支援し、実現させるべきだと思わずにはいられない。もちろん周辺国からのプレッシャーで難しいだろうが、そんな日本の現状もまた、零戦がなかなか帰国できないのと同じように悲しい。
重く濃い緑色のボディに真っ赤な日章。まるで丸い筒のような機体が、高速で小回りをきかせながら、日本の空を飛ぶ姿を見たいものだ。
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