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原子力、医療、JR……、「ムラ」の不正はなぜ原因究明ができないのか?:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
事件、事故が起きたときに、その原因を追及するのもムラの人間だ。だから、犯人がムラの外へと逃げてしまったら、それを追いかけて取っ捕まえるということまではしない。
補修が必要な線路を放置していたJR北海道に国交省は特別保安監査を行ったが、保線の責任者ですら「なぜ放置したのか分からない」というぐらいなのだから、やはりここでも「犯人」まではたどりつかないだろう。
なぜ命にかかわるインフラを放置するのか? 誰に責任があって、誰が悪かったのか?
「ムラ」の外にいる人間が知りたいことは何も明らかにされない。「そんな簡単な話じゃないんだ。カネとか組織とかいろいろ難しいんだよ」という理屈によって、サクっと「家」につけ火だけして、真相はうやむやにされる。
原発事故は言わずもがなだが、先日もJR西日本の福知山線事故で、歴代社長はおとがめなしという判決が出た。笹子トンネルの事故でも遺族たちは責任と賠償を求めているが、中日本高速は真っ向から対立している。
原発、高速道路、鉄道……、高度経済成長に便乗して、後先考えず作りあげてきたインフラが音をたてて崩壊していることからも、「ムラ」の「常識」が通用しなくなっているのは明らかだ。
橋がいきなり崩壊する。道に穴が空く。電気が止まる。インチキの薬や食品をつかまされる。このまま「自検断」スタイルを続けていても、同じような不正が繰り返されるだけだ。たまにはとことん「犯人」を追いかけて、誰が悪かったのか白黒ハッキリつけてもらいたい。
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