自分の持ち味を磨くことに徹する――完璧になる必要はない:勝者のための鉄則55(2/2 ページ)
イチローは、20年以上、ヒットを打つことだけに専念し、ホームランなどの余計な欲を持たなかったから、あれだけの大記録を達成できたのだ。自分の素質はどこにあり、何が優れているのか。何を捨て、何に徹するか。それを見きわめることが重要なのだ。
ヒットを打つことだけを考えて20年
イチローは、ヒットを打つことだけを考えて、20年以上ずっと野球をやってきた。己の進む道だけを見据え、ホームランを打ちたいとか、余計なことはいっさい考えなかった。あくなき探究心で、メジャーに行ってもどうしたらヒットを量産し続けられるかを求め、メジャーの重い球質に対応するために振り子の振り幅を小さくするなど、バッティングを工夫してきた。だが、けっして余分な欲は持たなかった。もしイチローが、俺はバッティングの天才だから、今度はホームラン王を狙おうと欲張ったらどうなっただろうか。結果は火を見るより明らかだ。
それに対して松井は、彼の素質を十二分に生かし切っただろうか。少なくとも私はそう思っていないし、おそらく長嶋さんも同じ思いのはずだ。
イチローは日米通算4000安打を、第1打席でいとも簡単に達成した。つくづく不思議な男だと思う。私が3000安打を達成したときは、第1打席であと1本と迫りながら、2、3打席目は凡退だった。第4打席で阪急ブレーブスの山口高志からホームランを打って達成した。しかし、正直に言えば打てそうもなかったので、彼の速球を「1、2の3」で当てにいったのが、結果オーライとなった。イチローを見ていると、プレッシャーなんてとても感じていないようにあっさりと決めてしまったが、内心はどうだったのだろうか。
自分の素質はどこにあり、何が優れているのか。自分の生きる道はどこにあるのか。何を捨て、何に徹するか。それを見きわめることが重要なのだ。
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