2014年、日本の株価に影響を与えるのは中国か、それとも中東か:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
年初に日経平均株価が大きく下がった日本。アベノミクスで景気は上向きだが、景気回復への懸念は国外にも多い。2014年に日本が注目すべき国際情勢とは。
中国のシャドーバンキング問題は、リーマンショックの再来か?
中国のシャドーバンキング問題(※)については、中国政府は懸命に“コントロール可能”というメッセージを出している。2013年の後半から全国に5万4400人という前代未聞の規模で会計士を派遣して、公的債務の監査を実施した。
監査対象になったのは中央政府、地方政府および地方政府の融資平台(資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備える投資会社)などだ。注目されたこの監査結果が2013年12月30日に発表された。2013年6月末現在で、中央政府の債務残高は約11兆元(日本円換算で約190兆円)である。しかしこのほかに、いわゆる偶発債務(債務保証など直接的な返済責任はないが、借り手が返済できなくなると返済義務が発生するもの)などがあり、これらをすべて合計すると約18兆元(約306兆円)という金額になる。
※通常の銀行ではなく、信託会社や保険会社、質屋といった影の融資機関(シャドーバンキング)が、地方のインフラ開発などに資金を貸している問題。政府の債務が急激に増加しており、リスクの高まりが懸念されている
中央政府の分と地方政府の債務を(偶発債務も含め)すべて足しても、GDP(国内総生産)比で56%にしかならず、多くの先進国に比べて“健全”というのが中国政府の見解だ。確かに日本の場合は、同じ定義で計算すればGDPの2倍以上になるわけで、中国政府の言い分も一理ある。
しかし中国の場合、いわゆる理財商品(高利回りの資産運用商品)を通して地方政府に流れている資金があり、ここにもし取り付け騒ぎのようなことが起きれば、一気に社会不安となりかねない。理財商品を買って、地方政府に融資しているのは高い利回りを求めて投資した個人や企業だからだ。
地方政府が開発プロジェクトの遅れや見直しで、その利息を払えなくなれば多くの人に影響を及ぼす。たとえ経済全体から見れば小さい金額でも、金融システム全体を揺るがすリスクに成りかねない。
こうした事態が発生すれば、国有企業を中心としてたちまち資金繰りに窮する企業が出てくる。そうなれば、中国企業に生産財や中間財を供給する日本企業もお手上げだ。2008年に起きたリーマンショックの際に、日本は元凶のサブプライムローンを組み込んだ金融商品とほとんど関係なかったのに、その後、訪れた急激な信用縮小によって大打撃を被った。
中国で金融危機が発生すれば同じことが起きるはずだ。そうしたリスクに完全に防ぐことは難しくても、実際に起こったら何をすべきか、というシミュレーションはやっておくべきだろう。
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