若い自分のままで150歳まで生きられるとしたらどうしますか?:伊吹太歩の時事日想(4/4 ページ)
150歳まで生きられる人間はすでに存在している可能性が高い。そして20年以内に寿命は1000歳まで伸びる……かもしれない。寿命が伸びれば「老後」の考え方も変わってくる。
定年退職がなくなる、社会保障のあり方はどうなる?
デグレイ博士に言わせれば定年退職はなくなる。彼は「今の社会では、リタイアすると永遠にリタイアする。そうなるとも年配の人には申し訳ないが、彼らは衰退していく。実際にはモラル的にも社会学的にもリタイアする必要はないのだが」と言う。
そして、「現在のようにセーフティネットとして社会保障が必要になることは確か。ただ定年は周期的なもので、定年後は社会保障を受けながらゴルフ三昧の生活を送り、でも20年ほどしてゴルフに飽きてしまったら、再訓練か教育を受けることもあるし、それから40年間ロックスターになることもある。そしてまた定年して……と続いていく」ということも考えられるそうだ。
ただそんな世界になれば、地球規模のいろいろな問題が出てくるはずだ。事故や感染症など以外では人間は死ななくなるために、人口は間違いなく増加する。それについて彼は「石油や石炭を使うような環境への影響が少なくなり、地球上にさらに多くの人が暮らすことも可能になると考えられる」と言う。
もっとも彼に言わせれば人口が爆発的に増えることはない。「女性は今以上に裕福になり、教育水準も上がり、もっと自由になる。そうなると女性は子供を多く生まなくなるし、出産年齢も遅くなるとみられる。自発的な月経停止も可能になり、年齢的な制限がなくなれば、女性が子供を産む年齢はもっと遅くなるだろう」。
ただこれについては、食料の問題などと同じく、さらに説得力のある議論が必要になるだろう。
デグレイ博士のいう世界になれば、もう誰も「人生は短い」なんて考えることはなくなるだろう。実は彼の7つのダメージの中には、すでにいくつかは修復の実現に近づきつつあるという。例えば、アルツハイマー病の原因になると言われる細胞外に分解後に残る「ごみ」については、すでに修復が可能になっている。
この調子で20年後に、人間がデグレイ博士のいう7つのダメージすべてを修復できるようになれば、寿命が飛躍的に延び、人生という概念がすべて変わってしまうだろう。デグレイ博士や同様の研究を続ける博士たちは、それを目指して大真面目で研究を続けている。
著者のような凡人からすると少し話が飛躍しすぎているように感じる。だがデグレイ博士の主張や研究が非常に興味深いものであることは間違いないし、彼の言うことが実現したら、それはそれで楽しい人生になるのかもしれないのだが。
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